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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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文化祭-10

「…望」

「…ん、どうした?」

「どうしたはこっちの台詞。…大丈夫?」

最近、特にボーっとしている日が多い気がする。大丈夫だよと笑うその顔には明らかに元気が無い。作り笑顔はすぐに消えた。

「…いや、悪い。大丈夫じゃないかもな…」

大丈夫じゃないと素直に認める。心がしんどいと弱々しく呟いた。

「…なぁ、海菜…文化祭の後、時間ある?」

「今日?大丈夫だよ。…他は誘わないほうがいいかな」

「ああ。…2人きりで話がしたい」

「…分かった。百合香には先に帰っててもらうよ」

「…悪いな。中庭で待ってる」

「良いよ。…さあ、そろそろ始まるよ。切り替え切り替え」

「ん…」

目を閉じ、集中する。深い深呼吸の後、目を見開いた瞬間、彼の纏う雰囲気が変わる。忠誠を誓うように、胸に手を当て、私の前に跪いた。中学の頃から変わらない。彼はこうやって、本番直前に役に入る。いわばこれは、儀式のようなものだ。

「…"アレク"僕は堅苦しいのは嫌いだといつも言っているだろう。さあ、立って」

言われるがまま、立ち上がる。まるでロボットのように無駄の無い動きだった。

「アレクー、緊張してんのか?」

「…ハルト、やめろ」

茶化すように同僚の騎士役の生徒が彼の背中を叩いた。学年としては先輩だが、役としては私の部下にあたる。

「…さあ皆、準備はいい?」

「ええ、いつでも」

「大丈夫っすよー王子ー」

「王子、号令を」

役になりきっている部員達を確認し、腰に下げた剣を掲げる。
騎士達も剣を掲げた。

「行こう!あの子の待つ塔へ」

本来は終盤の台詞なのだが、号令代わりに使う。他にカッコつく台詞が思いつかなかった。おおーという小さな歓声は、開演のブザーによって掻き消された。まだ幕の上がっていない舞台に上がり、幕の前に横一列に並ぶ。向こうからは、娘と魔女の手下達。

「…やっぱり海ちゃんデカいなぁ…」

隣に並んだ、魔女の娘フローラ役の月島 満(つきしま みちる)ちゃんがポツリと呟いた。

「満ちゃん、ちゃんと役入ってる?」

「ええ、大丈夫よ」

役の口調で答える。マイクが回ってきた。声を拾わないよう、会話をやめる。

「…皆様、本日はお越しいただき、ありがとうございます。主演の鈴木海菜です。今回は王子役なのでこんなんですけど…一応、普段はセーラー服着てます。あ、ヒールは履いてません。元からこの身長です。180センチあります。隣の騎士君より1センチ高いです」

会場が笑いに包まれる。笑ってもらえると安心する。
身長ネタいつまで引っ張るんだよと隣からため息が聞こえた。

「そんなわけで、本日はよろしくお願いします。…では、もう少しだけお待ちください」

私に合わせ、全員で礼をする。一度舞台袖に戻り、定位置に着く。
再び開演のブザーが鳴り響いた。
舞台の幕が上がっていく。


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