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よだかの星に微笑みを(第一部)
【SF 官能小説】

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男子の夢-1

秋には毎年、演劇部の公演があった。ひいなさんが伊月に振り向くとは想像できないが、応援くらいはしてやろうと思う。でも、まあ、俺からひいなさんに何か言うことはないだろう。
公演は夜七時から、一週間ほども毎晩行なわれる。いつでも伊月は毎晩通い詰める。俺と渡部は付き合いで一度しか行かない。
うちの大学の演劇部は、子供の頃見た劇団の演目とは程遠い、おどろおどろしいものが好きだった。朝から晩まで練習しているので、部員をあまり講義で見かける事がない。時たま何かの講義に出たりすれば、変わり者か芸能人扱いだ。美形が多い割に、どこかしら鼻に付く雰囲気がある。だが、これも先入観だろう。
「一緒にいりゃ、連帯感も強くなるし、先輩だったら尚更憧れるよな。伊月君、ひいなの事、よろしく頼むよ、だと。社交辞令も下手の極みじゃねえかよ。」
基本的にクダを撒く事しかしない伊月は、初演を観た帰りの飲み屋でも、そこから始まった。そもそもこいつは自分の話が多い。単なる嫉妬を聞かされるのは迷惑だ。俺も渡部も、話は聞きながら、話題転換の隙を狙っていた。
「それでよ、来週の月曜に飲み行かねえかって誘ったら、来るってよ。向こうの打ち上げも終わってるから。」
「いい話やんか。いらんこと聞かせんと、そこから言え。」
「お前とひいなさんと二人で行くんだろ。デートじゃんか。まさかここに連れて来ないよな。」
「二人で行くとこなんか、無えよ。だからお前らも付き合え。」
女子と飲んだことが俺はなかった。何を話せばいいのか分からない。
「そう言や、俺たち、ひいなさんの事ほとんど知らんな。大体、苗字からして知らんわ。向こうもお前の名前、実は知らんのと違うか。」
「岡田だよ、岡田。名簿見てんのか。」
「普通そんなもん、見るか、ぼけ。」
「豪邸でよ、高校生の弟と中学生の妹がいるんだよ。弟は秀才だけど、妹はヤンキーなんだと。」
「豪邸以外は、いらん情報やな。手羽先とハツ頼もか。」
「焼きそばとモツ煮込みと揚げ出し豆腐も。」
言いながら思った。岡田? 弟と妹? 秀才とヤンキー? まさかな。


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