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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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私達のバレンタインデー-3

2月13日。バレンタインデー前日。
こっそり渡したいから、早めに来て欲しいと言ったのは私だが、どうやら早く着き過ぎてしまったようだ。教室には誰もいない。数十分早いだけで、こんなにも教室は寂しいものなのか。海菜も、まだ来ていない。カバンから教科書と共に取り出したチョコレートの置き場に迷う。
海菜の机の中に入れてしまおうか。いや、直接渡したい。
そわそわしていると、教室の扉が開いた。びくりと肩が跳ねる。

「あっれー、今日は開いてんじゃん…。お?ユリエルだ。おっはよー」

入って来たのは海菜ではなく、恋愛話が好きな長谷川きららさん。私のことを何故かユリエルと呼ぶ、見た目は清楚だが、中身はギャルな子だ。どちらかといえば苦手なタイプだが、嫌いなわけではない。

「お、おはよう…長谷川さん」

「珍しいね。いつもあたしが一番乗りなのに。…もしかして…それのため?」

ニヤニヤしながら、私の持っているチョコレートを指差す。咄嗟に背中に隠した。

「その反応…本命だな?けど、バレンタインデーは明日っしょ?1日早くね?」

「…知ってる。けど…その…誰よりも早く渡したかったから…」

「えー!?何その超可愛い理由!ずるくない?あたしも来年から使おっかなー」

「…長谷川さんは…好きな人いるの?」

「んー…ああ、そうか、まずは好きな人見つけなきゃだな…。恋に憧れはあるけど…誰かを好きになったことないんだよねー…あたしこんなんだから、男子は結構、見た目と中身のギャップに引いちゃうらしい。勝手だよねぇ…。別に清楚系装ってねーし。校則守ってるだけだし」

「…意外と真面目よね」

よく言われる。とため息をついた。気に障っただろうか。

「親によく言われんだよ。ルールも守れない大人にはなるなって。簡単なルールも守れないことが一番ダセェけど、自分を誤魔化す必要はない。オンとオフを使いわけろって」

「…なんだか、貴女の事誤解してたみたい」

「まあ、ギャルは不真面目っつー…なんだっけ、せんにょうかん?」

「先入観ね」

微妙に惜しい。

「そーそーそれ。そういうの、あるっしょ。慣れてっし、気にしんでいいよ。あ、真面目だからって、勉強は出来ないけどね。難しいことは苦手でさ…一応、早めに来て勉強してんだけど…」

「…いつもこの時間に?」

「うん。朝が一番頭に入りやすいらしいから。親が起きる前に起きて、自分で適当に弁当作って来てる。うち、ママしかいないしからさ…夜遅くまで働いてあたしを育ててくれてんの。だから、ゆっくり寝かしてやりたいじゃん?なんだっけ…えーっと…おや…なんとかこう」

「親孝行かしら」

「あー、多分それ。ユリエルやっぱ頭いいね」

ほとんど話したことなかったが、話してみると、抱いていたイメージがほとんど覆っていく。凄くいい子だ。自分の中の彼女に対する好感度が上がっていく。

「…ところで、そのユリエルってなんなの?」

「あだ名だよ。百合香だから、ユリエル」

「それはわかるけど…エルはどこから来たのかしら」

「なんとかエルって天使よく居るじゃんね?ユリエルはなんか、天使っぽいから。ほら、えっと…"かみがみしい"?みたいな雰囲気あるじゃん」

神々(こうごう)しいと言いたいのはなんとなくわかるが、私は彼女からどんな風に見えているのだろう。

「…"神々しい"ね」

「こうごう…?ずっとかみがみしいだと思ってたわ。けどユリエル、入学した時と雰囲気変わったよね」

雰囲気が変わった。その言葉は最近、よく言われる。
きっと、彼女のおかげだろう。

「おはようー。…あれ、長谷川さん早いねー」

扉が開く音とともに、海菜の声がした。

「おはよう王子。…あれ、王子もチョコ持ってんじゃん」

「うん。百合香と交換する約束してて」

平然と海菜は言う。長谷川さんの反応を見る。何か考えている顔だった。あんな言い方をしてしまえば何か察してもおかしくはない。どう思うのだろう。

「ん?どうかした?」

「王子とユリエルって、付き合ってんの?」

ストレートな質問だった。聞いてから彼女はハッとし、聞いてはいけなかっただろうかと気まずそうな顔をする。何となくだが、彼女には打ち明けても平気そうな気がする。

「…そうよ。付き合ってる」

海菜が一瞬だけ驚いた顔をしてから、ふっと優しく笑った。
長谷川さんはなるほどと何故か納得したように呟いた。

「どっちから告白したの?」

「…どっちからだったかしら」

「流れでだったもんね」

「へー、そういうもん?会話の流れで、じゃあ付き合っちゃう?みたいな?」

「そこまでは軽くなかったけど…」

同性同士だから珍しくて興味があるというよりは、ただ純粋に恋の話が聞きたいというだけのようだった。だからだろうか、すんなり話を続けられる。

「あ…つい色々聞いちゃったけど…2人はオープンにしてるわけじゃないよね?」

「そうだね。だからあんまり言いふらさないでくれると助かる」

「りょ。安心して、こう見えてあたし、口硬いから」

「そうは見えないけど」

「だからこう見えてっつってんじゃん。ぜってー言わねーから。あたしらだけの秘密な」

「まあ、長谷川さん以外にも知っている子はいるけど」

「あたしだけじゃないんかい!」

味方が増えていく。
世間に差別が全くないわけではないが、世間は私が思っているより、優しくないわけではないと、過去の私に教えてあげたい。


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