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よだかの星に微笑みを(第一部)
【SF 官能小説】

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夏前に-3

終電がなくなってしまったので、歩いて帰ることになった。伊月は渡部の所に泊まるという。歩いて帰ると一時間はアパートまで掛かるのだった。
「飛ぼうかな。」
一度楽をすると人間は味を占めるものらしい。俺は自分から変身したくなった。かなり酔っていた。人目もどうでもいい気分だった。
ところが、変身の仕方など分からない俺はただぶらぶらと歩き続けた。
途中、有名な女子校の横を通過する。その時、ふと、ここの女子トイレはどうなっているのかと気になった。小学校から大学までが敷地内にあるお嬢様学校だ。
中に入ってみたい。そう思った。でも校舎に入ったら非常ベルが鳴って捕まるだろう。しかし、お嬢様が使う小中高大の女子トイレを比べてみたい欲求は強かった。なんで女子トイレには男が入れないのか、腹立たしい。
その気持ちで俺は変身した。誰もいない塀の陰である。セキュリティーの仕組みは触角で丸分かりだ。入れる。しかし、いくつもある校舎を回るのは広くて面倒臭そうだったので、まず触角でトイレを覗いてみようと思った。
小学校は、漂うおしっこのにおいが清々しく感じられた。高学年になると、個室に箱が置かれている。箱の中には、大きな絆創膏のようなものが時々入っている。黄ばんだものも、血の付いたものもあった。
それが、中学、高校と上がるにつれ、箱はオムツのような物に溢れかえっていた。棒状の何かもあった。どこも大量で、箱から溢れ出ていさえする。しかも血だらけの上に、この暑さで腐っているようだった。悪くなった魚に似たそのにおいと味に俺は顔中包まれる思いだった。
「生理用品て、これか。おえっ!」
何か悲しい思いがした俺は飛び上がった。
お蔭様で飛んで帰れるのは良かったが、ポリアンナもあれを出すのか。いや、世界中の女性があれを出しているのかと思うと、複雑な気持ちになった。
ふと、右手後方に違和感を覚えた。ここは空中である。それは一キロ以上離れているらしい。俺の複眼が飛行する「虫」を捉えた。
「あの形、高橋先輩? やばい。」
見つかるといけない。何故か咄嗟に思った。
先輩らしい虫はかなりの速度で接近し、そのまま通過していった。俺には気づかなかったようだ。
「ステルス機能じゃないか、これ。」
俺は、これなら女子校に堂々と白昼忍び込めるかもしれないと考えたが、たちまち腐った生理用品を思い出し、気持ち悪くなって、まっすぐアパートへ帰った。


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