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よだかの星に微笑みを(第一部)
【SF 官能小説】

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夏前に-2

「田舎のある奴はいいよな。俺はどこにも行けねえよ。」
伊月がいつも通りの文句を言うと渡部が
「俺は、まあ奈良にも帰るけど、ほとんど研究会の合宿やで。漢文、読み通しや。ほんとキツいわ。目え、悪くなるし。お前は今年どうすんねん。」
「何にもない。詩人は暇じゃないとな。」
「お前はただの暇人やないけ。勉強しとんのか。」
「こいつは女にうつつ抜かしてるからな。いいかげん、紹介しろ。」
「いつ会うんだよ。中学生、ここ連れてくるのかよ。」
「絶対俺もこの夏はセックスする。風俗で外人とやる。」
「なんで外人にこだわっとるねん。帰国子女の意地かなんかか。それに弘前は中学生とやから、おままごとのお付き合いやろ。」
言われた伊月が
「そう言や、川端康成の『眠れる美女』って、老人と十六歳くらいの女の話だろ。やっぱ男はいくつになっても動物的な部分が抜けねえんだな。」
「そうか?」
俺は、ポリアンナがいつもする激しく欲情した姿を思い浮かべた。
「最近、外来種問題がうるさいな。あれ、どう思う?」
渡部の、いきなり話題を変える癖が出た。俺は
「お前のその話の飛び方、何とかならないのかよ。付いていけない。」
伊月が
「外人と動物が出たからだろ。繋がってるよ。」
「外来種問題って、経済が、つまり人間の欲望が招いた結果やろ。そこを何とかせんと止まらん思うけどな。」
「ブラックバスはそうらしいけど、中にはウシガエルとかウチダザリガニとか、人の食用に連れてきたのもあるって聞いてるぞ。」
「今はペットが主流じゃねえの? ウーパールーパーって、絶滅危惧種なんだってな、地元では。絶対、その辺のデパートとかで売ってる数の方が、世界中集めたら多いぜ。」
伊月が博学らしく批評したのを受け、俺が
「進化論的にはあれか、人間を利用して、種としての存続を図ったわけか。」
「それ考えたら、人間も自然の一部で、経済活動とかと動物の生存本能とかが実は混ざって動いてたちゅうことやな。面白い、面白い。進化論やと、ガイア説、言うのとちゃうかったか。」
「つーか、農業は何なんだよ。野菜で外来種じゃないもの、あんのか。」
「人間も元はと言えば、アフリカ産の外来種だよな。何が問題か分からなくなってきた。ポリアンナみたいな外国人とか、移民に話を広げると嫌な議論になるな。」
「ポリアンナって、誰だよ。まさかお前、外人と付き合ってんのか? 俺を差し置いて。」
「詳細を教えてもらわんといかんな。あ、生大(なまだい)みっつお願いします!」
いつも議論のために議論するような俺たちだった。来年の今ごろは就職活動だろう。こういう時間がずっと続いてほしいと、俺は思った。


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