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わるい娘、メンヘラビッチとの出会い
【学園物 官能小説】

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ママのしつけ-1

 ママはとかく時間にうるさく、家事全般、時間で考える人だったみたい、今日という一日をスケジュールで管理して、そのタスクをいかにこなして行くかという考え方だった。
 幼稚園児だったころ、習い事でスイミングを始めたんだけど、ママの忙しいスケジュールと重なったときなんだろう、
「今日はもうスイミングにいくの嫌」
 そういって駄々をこねた。
「スイミング終わったら、今晩はお客様がくるの、したく忙しいんだからいうことを聞いて順子」
「スイミング嫌」
「順子ちゃん、ママの言うことを聞いて」
 そんなやり取りが何回か続いた後……
「うるさい! いいかげんにしろ!」
 鼓膜がビリビリして、おなかに響くくらいのママの大声にびっくりした、その証拠にスイミングスクールの周りにいたお友達もみんなこっちを向いて足を止めたもの。
 順子の手をそっと手放し、
「おまえを拾ったのは大間違いだった、ここで捨てていっちゃお、順子じゃあね」
 いまでも背筋が凍りつくような一言だった、と同時に氷のように冷たく、スライムみたくドロッと粘つく目と口元の笑みに、どれだけ怖かったかしら、なんてものじゃない……親から捨てられる恐怖なんて、言い表せるものじゃない。
「ま、ま、……ママ……ママ」
 声も体も、そして視界すらも歪んで振るえて、どこにも行き場なんか無くって、誰にも頼れなくって、パパもママもいなくなっちゃうこの感じ、一体どう表現したらいいのかわかんなくなるくらい、世界が上下逆さまになるくらい怖かったわ。
「あら〜どこの子かしら? 何を泣いているの?」
 この一気に突き放された距離感をママは計算していたんじゃないの、当時のあたしには決してわからなかったけど、
「……ま……」
 喉の奥の何かが詰まって言えない感じ、幼心にはそれがなんなのか全く解らなかったし、わかりたくもないし、今でも考えたくも無い、持ちたくも触れたくも無いこの感情の正体は?
 鼻の奥がツーンと痛みだし、ぽろぽろ涙が溢れて止められない。
「何泣いてんの、冗談ちょっと言ったくらいで、馬鹿な子ねえ、順子が水泳を嫌がるからちょっとからかっただけよ」
「ママ……」
 放された手を繋ごうとすると、ママはその手をはじき、
「もう水泳行くのいやいやしたらダメなのよ」
 そうして順子は決してママには逆らっては駄目なんだということを、親に捨てられるという怖さを、心の底から思い知ったの。
「全く冗談も分からないなんて馬鹿な子ねえ」
 ママは普段はとっても優しくて、明るい性格なのに、一度切れるととことん激しい、でもいつどうして切れるのかなんて子供だったあたしにはよくわからないし、でももっとわからないのはあたしの心、こういう事されると心に何かドロリとした、モヤみたいのが溜っていくの、それが嫌だった、嫌だけどどうしていいのかなんて幼い子供にはわからない、嫌だったひたすらに嫌だったというしかないの。
 あんまりにそんな気持ちが酷い夜、ママにギュッとされるのが気持ち悪く思えるとき、順子は『ミッチー』と名付けた太っちょイルカのぬいぐるみを抱いて寝るの、柔らかくて暖かくってタオルみたいなその肌触りがあたしは大好きだったから。
 でも順子がなにか、ある時ママを怒らせてしまった、もう何度もやっているから、あたしは直ぐに頭を押さえ、丸まったの、身体を固くして順子を守らなきゃって、
「えっ順ちゃん、どうしたの? ママぶつとおもったの? 大丈夫そんなことしないから、ちゃんと立ちなさい」
 ぶつことは基本ママはしない人だけど、キレ方が激しくきついから、やっぱり怖いのにその時に限って、やけに優しいママだったわ。
「ママごめんなさい」
「いいのよ順ちゃん、ママ怒ってなんかいないからね」……
 あたしのしたことはそんなに悪いことなのかなって、今でもよくわからない、ママの化粧道具で遊ぶの、そんなに悪いことなんだろうか、ファンデを付けるのとか、子供の肌によくないから叱ってくれたんだろうか、そう思いたい、ママの事を悪く思うのそーいうの嫌だし。
 次の日幼稚園の送り迎えのバスを降りて、ママに出迎えられ、「おかえりなさい」とママがギュッとしてくれた、そうしてくれるのが習慣で、そんなママが順子は好きだった。
 手をつながれ、玄関を開けた時、あたしは固まって、ちょっと震えがおきて、顔がすーっと冷たくなっていくのが分かった、胸に手を当ててぎゅっとこぶしを握ってしまう。
 玄関わきにズタズタに引き裂かれ、生ごみで汚れた『ミッチー』の変わり果てた姿が、ごみ袋から透けて見えるように置かれていたの、絶対あたしに見せつける為よ。
 すぐに誰がやったのかわかった。


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