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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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クリスマスの決意-5

「っ…!」

深夜2時。悪夢を見て目が覚めた。
包丁を持った母に追いかけられる夢。
夢の中の私は、幼い頃の私で、父と幼い兄と一緒に母から逃げていた。しかし父が途中で私を突き飛ばし、私を生贄にして兄と共に逃げた。父が私を置き去りにし、兄を連れて逃げたあの日のことを暗示していたのだろう。私はまだあの時のことを引きずっている。こんな気持ちで、帰っていいのだろうか。
現実に戻ってもまだ、心臓がうるさいほど鳴っている。
隣で眠っていた海菜が小さな呻き声を上げた。私の声で起こしてしまったようだ。

「…ん…百合香…?」

「ご、ごめんなさい…起こしちゃったわね…」

「…怖い夢でも見た?」

優しい声で言いつつ、私を引き寄せ抱きしめる。私もしがみつくように腕を回す。彼女は子供をあやすように、私の頭を撫でてくれた。
彼女の温もりに包まれると、安心する。少しずつ、心臓の鼓動が落ち着いていく。

「…やっぱり不安なのかな、お父さんのところに帰るの」

「…父…もだけど…兄に会うのが不安なの」

「一つ上だったよね」

「そう…だけど…貴女に兄の話ってしたかしら」

した覚えはない。
彼女は「父から聞いた」と答えた。初めて会った日に色々と聞かさせたらしい。事情聴取を受けたあの日以来、父には会っていない。
…そういえば、帰るはいいが、どうやって父に連絡を取ろうか。
私は父の家も、連絡先も知らない。

「…百合香?」

「…私、父の家も連絡先も知らないのに帰るなんて…」

「ああ、大丈夫だよ。私が知ってるから」

言ってから、あ…と声を漏らした。しまったと言わんばかりに。

「…もしかして、私に隠れてコソコソ連絡取ってたのって…」

「あはは…バレちゃった。君のお父さんには内緒にしてって言われてたから。あと、君が帰るって話ももう報告済みです」

きっと父は私に気を使って、私ではなく海菜と連絡先を交換したのだろう。そうだとしても、少しムカつく。それは、私から逃げているのと同じだ。いや、逃げたがっていたのは私も同じだ。事実、逃げたのは私の方だ。海菜の家に転がり込んで。
ちゃんと、向き合わなきゃ。母と向き合うよりは、簡単なはずだ。

「…明日、父さんの連絡先頂戴」

「ん…わかった」

「…じゃあ、おやすみなさい」

「…眠れそう?」

「…このまま抱きしめていて欲しい」

「ん…わかった」

「…ありがとう海菜…」

彼女の温もりが、ゆっくりと不安を和らげていく。不安が消えていくと共に、入れ替わりで睡魔がやってきた。いつのまにか、海菜は寝息を立てていた。その寝息に誘われるように、私も夢へと誘われていく。
二度目に見た夢の内容は思い出せない。けれど、幸せな夢だったんだと思う。


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