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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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両親と百合香-1

「ただいま」

「お帰り。お疲れ様」

父の明るい声とともに、なんだか甘い匂いがした。テーブルの前の椅子に座る父が、ナイフとフォークを手に持ち、ワクワクするように、左右に揺れている。

「…ほい、お待たせー。お、グッドタイミング。お帰り、二人とも。丁度今、パンケーキが焼き上がったんだ」

出てきたのは、厚焼きのパンケーキ。父はテーブルの上に置かれたそれに、バターを一欠片落とし、はちみつをかける。
ナイフで切った一口サイズのパンケーキを口に運ぶ。うまっ…という感嘆の声と共に、幸せそうな顔をした。

「ほら、座って座って。あ、百合香ちゃんアレルギーとかないよね…?」

「え、えぇ…アレルギーは…特に」

「甘いもの平気?」

「はい…あ、いえ、え…えっと…あまり…?」

どっちなんだろう…という、悩むような顔だった。
そういえば、好みも母親に決められたと彼女は言っていた。
好きなものを好きと、嫌いなものを嫌いと言えなかったせいで、わからなくなっているのかもしれない。

「口に合わなかったら俺が食う。安心して」

「君が食べたいだけだろ」

母の手刀が父の頭に落ちる。頭を抑えながら、拗ねるように父は唇を尖らせた。

「とりあえず食べてみてよ」

「えっと…いただきます」

「いただきます」

ナイフで切り分け、小さな一欠片を、小さな口に運ぶ。
ぱっと彼女の瞳が大きく見開かれ、輝いた。
それを見た母が嬉しそうにふっと笑う。

「…ふわふわ…」

「俺が作るとこうはならないんだよなぁ…」

「父さんが作るパッサパサのパンケーキとは比べ物にならないくらい美味しい」

「…海菜最近、父さんに辛辣じゃない?」

「とか言ってさりげなく私のパンケーキを奪おうとするな」

私のパンケーキに伸びる父の手をはたき落とす。その様子を見ながら、くすくすと百合香が可笑しそうに笑う。

「…少し食べます?」

「え、いいの?」

「えぇ、こんなに食べられませんから。半分貰っていただけると助かります」

わーい。と嬉しそうに父が百合香のパンケーキを半分持っていく。
少しは遠慮しろよと母がため息をついた。

「にしても百合香ちゃん、少食なんだね」

「…太るからって、あまり食べさせてもらえなかったので…」

暗い声に、父の手が止まる。

「あ、えっと…ごめんなさい。食べづらいですよね…こんなこと言われちゃうと。でも本当に大丈夫です。あんまり食べると、夜ご飯、入らなくなっちゃいますから…」

「…うちでは好きなだけ食べていいからね」

「…はい。ありがとうございます」

俯き、涙声で、呟くように彼女はお礼を言う。私の手を握る彼女の手は、少し震えていた。


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