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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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魔女の目の届かない場所で-5

「…だったら、お母さんの望み通り、私から離れれれば良かったじゃない。どうしてそうしなかったの?」

「それは…」

彼女の言葉が、"魔女のお人形"の言葉をかき消した。言葉を失う私に、彼女は続ける。

「…大丈夫。私しか聞いてないから。だからお願い…恐がらないで。本当の君の言葉を聞かせて。大丈夫…私は君の味方だから。君を否定するようなことはしないし、言わない。私は君が好き。愛してる。恋人になりたい。"同性同士だから"とか関係ない。私は君が好きなんだ。…お願い、百合香、魔女のお人形じゃない本当の君の言葉で、返事を聞かせて。今、ここで」

「私は…私…は…」

その先の言葉が出ない。魔女の手下が、警鐘を鳴らす。魔女の声が、私の言葉を奪う。

「…私…も…貴女と…!」

貴女と恋人になりたい。
貴女が好き。
心が叫ぶ。けれど、言葉にならない。
言葉の代わりに出るのは、異常な呼吸音だけ。
また、過呼吸になる。苦しいのは嫌。けど、貴女に伝えなきゃ。好きだって。応えなきゃ。
彼女の手が、私の手を握る。呼吸音が、止まる。

「大丈夫…大丈夫だよ…そこまで言えば、言葉が無くたって伝わる」

彼女の顔が、私の顔に近づく。抵抗するより早く、腕を掴まれる。
そのまま、半ば強引に、唇を奪われる。
一瞬だけ触れ合い、すぐに離れた。
頭が、ボーっとする。その隙に、二回目がくる。
何回も、角度を変え、キスを繰り返す。
私達は女の子同士で…一体何をしているのだろう。けど…嫌じゃない。むしろ…ずっと…こうしていたい。貴女が好き。
気付けば、彼女にしがみつくように腕を回していた。

「…ん…ふぅ…」

唇の隙間から、吐息が漏れる。急に、彼女の動きが止まった。唇を離し、とんっと私を軽く突き放した。

「…ごめん。ダメだ…。ここ…カラオケボックスだ…監視カメラあるよね…」

「っ…!」

正気に戻った彼女が、ごめんね。と苦笑いする。
カメラが無かったら続けていたのだろうか。どこまで…していたのだろう。妄想を慌ててかき消す。

「え、援助交際と間違えられたら困るって言ったのは貴女のくせに…何してるのよ…っ…」

「君だって抵抗しなかったじゃない。それどころか気持ち良さそうな顔して…」

「き、気持ち良さそうって…貴女ねぇ!」

ふふと彼女が可笑しそうに笑う。楽しそうな様子に、怒る気が失せる。

「怒った顔、初めてみた。怒っても君は可愛いね」

「何よそれ…」

「…ねぇ百合香…君も、同じ気持ちってことでいいんだよね」

「…」

もう答えは出てるのに。それでも私の中の私が抗う。

「…キス、嫌だった?」

「嫌じゃない…。…ごめんなさい。たった…一言なのに。…言葉にするのが怖いの」

「…そっか。じゃあ、言えるようになったら聴かせて。待ってるから」

「…えぇ…貴女の隣に…堂々と立てるように…私も…私と…それから…母と向き合う。だから…」

彼女の服の袖を掴む。

「…海菜…お願い…勇気を…私に勇気を頂戴…」

「ん…おいで」

両手を広げた彼女の胸に飛び込む。彼女の心臓の音がする。少し早い鼓動。とんとんっと、あやすように頭を撫でられる。まるで、母親に甘えているようだった。

「…ねぇ、せっかくカラオケ来たんだし、何か歌わない?」

「…もう少しだけ…このまま…」

「…しょうがないなぁ…」

左手で私の頭を撫で、右手でカラオケのリモコンを弄り始める。
手慣れているように見えた。カラオケにも、恋愛にも。
心臓の鼓動だけが、彼女がドキドキしていることを証明してくれていた。


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