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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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球技大会-3

試合終了の合図が鳴る。
なんとか勝てたが、彼女のことが気がかりで、調子が乗らない。
百合香は…大丈夫だろうか。
なんて…過保護すぎるだろうか。

「よっ、うーみなっ」

「うわっ!びっくりした…母さん…」

背後からの母の声で、現実に引き戻される。首からはカメラがぶら下げられていた。隣には父の姿。当たり前だが、百合香と小春ちゃんの姿はない。それに気づいた母が首をかしげる。

「あれ、百合香ちゃんは応援に来てないんだね」

「あー…ちょっと…ね。私、彼女のお母さんに嫌われてるから…。今日は…近づかないようにしてる。…彼女にも…迷惑かけちゃうから」

「…ふぅん…なんか、複雑そうだね」

「…うん。かなり」

母の手が、私の頭を撫でる。

「…海菜さ、百合香ちゃんのこと好きでしょ」

母の問う"好き"の意味は友情を示すものではないじゃないことはすぐに気付いた。黙って頷くする。母も父も、特に驚かなかった。

「…驚かないんだね」

「まあね。だって僕も初恋は女の子だったし」

さらっと言う母に、逆に私が驚く。父はそのことを知っているのだろうか。父の方を見る。こっちを見るなよと苦笑いした。

「…俺も知ってるよ。海の初恋のことは」

「…なんで…父さんを選んだの?」

「失礼だな」

「ああ、ごめん…そういう意味じゃなくて…」

「僕は別に、恋愛対象が同性だけってわけじゃないから。零穏も初恋の人も、"その人だから好きになった"ってだけ。だから別に…零穏が女の子だったとしても、初恋の人が男の子だったとしても好きになってたと思う。ただ、そうなってたら2人は生まれなかっただろうね」

冷静に語る母とは裏腹に、複雑そうな顔をする父。少し嬉しそうにも見えるし、悲しそうにも見える。

「そうなんだ…」

私は多分、違う。彼女が男の子だったらきっと、こんなにときめかない。

「母さん、私は多分…母さんとは違う。女の子しか…好きになれないと思う」

私の告白に、なんとなくそんな気はしてた。と母は笑う。

「…誰を愛するか、決めるのは海菜だよ。僕が決めることじゃないから。それが女の子でも、君が決めた子なら反対するつもりはないから、安心して」

優しい手が、私の頭を撫でる。別に不安なんて無かった。母は私が誰を好きになろうと受け入れてくれるってわかっていた。けれど、心の何処かでは不安を感じていたのかもしれない。ぽろぽろと、涙が溢れでる。

「この後…試合なんだけど…やだなぁ…泣いてたら余計な心配されちゃう…」

「今言うことじゃなかったね」

「ほんとだよ…」

膝を抱え込み、母から差し出されたハンカチに顔を埋める。

「…海菜?大丈夫か?」

望の声がした。私の代わりに母が答える。球技大会の競技は男子と女子で別になっている。
多分、クラスの応援で来たのだろう。
タイミング悪いなぁと思いつつ、私からも大丈夫と答える。

「…そうか」

望が隣に座ると、母さん達は何かを察したのか少し離れたところに移動した。

「…ほんとに、大丈夫だから。母さんに…色々言われて、嬉し泣き…みたいな感じ…」

「…そうか。…今さっき小桜さんの方、ちょっと見てきた」

「…そっか。どうだった?」

「…ストレート負け。あの調子じゃ最下位確定だな」

「そう…か…」

練習の時にこれなら優勝狙えるかもしれないねって百合香と小春ちゃんが話していたのを思い出す。

「やっぱお前のこと気にしてんじゃない?」

「…かもしれないね」

だとしたら少し嬉しい。なんて、不謹慎だとはわかっていても思ってしまう。彼女が私のことを気にしてくれているなら嬉しい。

「…お前は?調子、どう?」

「私も全然。…百合香に会いたい…って、そればっかり考えちゃう…重症だよね…」

「…そういうもんだろ」

「そういうもんかな…」

「…そうだよ」

「…君が言うならそうなのかもね」

「…」

彼が何かを呟く。
"俺なら、お前にそんな顔させたりしないのに"
ハッキリと、そう聞こえた。悔しそうな声。
聞こえないふりをし、お礼と謝罪の言葉を心の中で彼に言う。
君を好きになれたら、良かったのに。
そんなことを、一瞬でも思ってしまった自分を責める。
そんなこと…応援してくれるっていってくれた母にも、望にも、そして百合香にも失礼だ。
けど…。
心が、苦しい。

「…人を好きになるって…苦しいね」

私の言葉を、彼は小さな声で、そうだな。と肯定した。


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