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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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呪(まじな)い-3

知らなかった。ダンスが、こんなに激しいなんて。
ステップについていくのに必死で、表情を作る余裕なんてなかった。

「小桜さん、少し休憩する?」

私とは違い、二人は余裕そうだった。海菜の従姉妹の問いかけに対し、まだ大丈夫なんて強がりの言葉は出なかった。頷くのが、精一杯だった。

「はい、お水。ゆっくり飲んでね」

私の隣に彼女が座る。部員と二人の姿を観察するように、頬杖をついた。肘の下には、ボードが轢かれている。

「…やっぱ海ちゃん、カッコいいなぁ…うちの部に欲しい」

海菜を見る。視線に気づいたのか、こちらに目線を向け、ターンから戻って来たタイミングで、片目を閉じた。完璧なウィンクだった。
星が飛んだ気がした。心臓を射抜かれたように、ぎゅうっと胸が締め付けられる。

「ウィンクとか…余裕だなぁほんと。…ねぇ、小桜さん」

部活紹介の時の私、どうだった?と彼女がボードに何かを書き込みながら問う。
"カッコ良かった"出掛けた言葉が引っ込む。カッコいいは、女の人にとって、褒め言葉ではない。いや、違う。そんなことない。
言葉に詰まる私に、彼女はごめんねと笑い、質問を変える。

「カッコよく踊れてたかな」

躊躇うように、間を置いてから肯定する。
ほんと?と嬉しそうに、こちらを向き、彼女は笑った。可愛い人だと思った。舞台上の彼女とは、別人のように。今の彼女が、本当の顔なのだろうか。

「…でも…実際の安藤先輩は…思ったより可愛い人ですね」

心の声が漏れる。彼女はありがとうと照れ笑いで返す。

「…あの時はね、海ちゃんをイメージして自分を作ってたの」

「…海菜を?」

「うん。踊るときはいつも、曲に合うように自分をイメージして作るんだけど…私の中のカッコいい女性のイメージがあの子。王子様なんて言われてるけど、女性らしい色気も持ってる。私にはない魅力だから、それを上手く私なりに表現出来るか心配だったの」

出来てた?と首をかしげる彼女に、こくりと頷く。

「…あの、練習したら私も…踊れるようになりますか?」

「…それは君の努力次第だよ。筋は悪くないと思う。問題は体力だね」

「…昔から…運動は…苦手…で」

「…私も。けれど、ダンスだけは得意なの。あー…馬跳びとかバク転とかは出来ないけど…そういうのはうちの部はあまり取り入れないから、安心していいよ。実はダンスに運動神経は関係ないんだ。意外と、私含めて運動音痴ばかりだし。体力とリズム感さえあれば大丈夫。小桜さん、何か楽器習ってたりする?」

「ピアノをやってます」

「じゃあリズム感は大丈夫だね。頑張って体力つけよう」

はい。と返事をしかけて、やめる。忘れていた魔女の声がまた脳裏に響いた。

「…あ、もしかしてまだ気になる部活あったりする?」

「いえ…その…」

「…入部は強制しないから。君が来たかったら、おいで。部長はちょっと怖いかもしれないけど…みんな良い人だから。怖がることないよ」

違う。怖いのは先輩たちじゃない。私が恐れているのは…

「…ちょっとみぃちゃん、私のお姫様口説かないでくれる?」

冗談っぽい、海菜の声が私を闇から引き戻す。菊池さんとともに、とすっと安藤先輩とは反対側の私の隣に座る。

「てか、みぃちゃんは良いの?練習しなくて」

「私はいいの。今は評価係だから」

ペンをくるくる回しながら言う。溜息をつきながら、部長が来た。

「ちゃんと書いてる?」

「書いてますよ。ほら」

「…喋りながらよく書けるね」

安藤先輩の左隣に部長が座った。先輩の隣から顔を出し、私達に部長は語りかける。

「えっと…空美の従姉妹の子は別の部活行くんだっけ」

「はい。友達と一緒に演劇部に」

「…ダンス部は全く入る気ない?」

海菜は、はい。と即答する。そっか…と部長は溜息をついた。

「即戦力なのになぁ…」

「小桜さんもまだ迷ってるみたいです」

「あ、私はもう、決めてます」

「ありがとう、菊池さん。でも…もう少しほしいなぁ…」

「先輩達居なくなったらかなり減りますもんね」

「そうなんだよねぇ…ほぼ三年だから…出来れば今の二年生の倍の人数は欲しい…男子でもいいから…」

舞台で観たパフォーマンスは、40人くらい居たが。そのうち二年生はわずか五人だという。その倍となると、10人。今日来た一年生は私達のみだった。

「…まさか、空美に圧倒されて怖気付いたか…?」

「私のせいにしないでください。…まだ時間はありますから。焦らず行きましょう」

「…マイペースね、ほんと…」

もし誰か誘える子が居たらどんどん誘ってね。部長は深刻な顔で言う。母の許可がないと入れないとは、少し言いづらい雰囲気だった。


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