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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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呪(まじな)い-1

体育館に一年生が集まる。今日は午後から部活紹介があった。
結局、海菜とと話した、体験入部の件は、まだ母に話せていない。しかし、海菜と同じ部活にはきっと入れないだろう。
母が許してくれない。各部の発表が次々と終わっていく。ほとんど、見ていなかった。見たってどうせ、入る部活は選べない。

『続いて、ダンス部の発表です』

わーと歓声が上がった。なんだ。今までの部と熱気が違う?

「…くるよ。見てて」

ああ、そういえば、海菜の従姉妹が居ると言っていた。
パッと明かりがスポットライトが点灯する。マイクを持った1人の女子生徒が照らし出された。こんにちは。と女子生徒の綺麗な声が響いた。

「ダンス部です。えっと…今から一曲、部員全員で踊ります。部活の紹介はその後に。では、私も着替えて参りますので、もうしばらくお待ちください」

頭を下げ、舞台袖に引っ込んで行く。しばらくして、黒いマントをまとって戻ってきた。

「…それでは皆様…」

女子生徒が口籠もり俯く。あー…恥ずかしいなぁ…という声を、マイクがしっかりと拾った。会場が笑いに包まれた。頑張れーと茶化すような野次が飛んだ。ふう…と一息つき、決心したように、顔を上げる。その瞬間、空気が変わった気がした。

「それでは皆様」

ゆっくりと、舞台の幕が上がっていくのに合わせ、女子生徒が、ゆっくりと宙に手を伸ばす。伸ばした手をくるりと翻し、会場に向ける。

「皆様の御心を、これから私達が頂きに参ります」

気障な台詞に、会場から笑いが溢れる。笑ってられるのも今のうちですよ。と女子生徒は挑発する様に笑い返す。会場が静まり返った。今のは多分、アドリブだ。さっきまで言葉に詰まっていたのが嘘の様な変わり様だった。

「さあ、心を盗まれるお覚悟は、よろしいかしら?」

静まり返った会場に、女子生徒の自信満々な声が響いた。
ばさっと、マントが投げ捨てられるのと同時に、曲が流れる。

「…うっわ、みぃちゃんやばっ…」

後ろから、そんな呟き声が聞こえた。センターで、一際色気を放つ女子生徒。さっきまで緊張した様子で喋っていた彼女だ。彼女が多分、海菜の従姉妹なのだろう。他の部員が目に入らなくなるほど、釘付けになる圧巻のパフォーマンスだった。
最後に指で銃を作り、パァンっと撃つ仕草をして、パフォーマンスは終了した。体感時間は、あっという間に感じた。

「…」

カッコいいと、思った。ダンス部に入ったら私も、あんな風に踊れる様になるのだろうか。
…母は、許してくれるだろうか。
許しを貰えたとしても…私はあんな風に、自分を晒けだせるのだろうか。
カッコいい女性に、なりたい。
閉じ込めたはずのもう1人の私の想いが、溢れる。
苦しい。

「…百合香」

後ろから、心配そうに私の名前を呼ぶ声がした。彼女はいつもそう。私の異変にすぐ気付く。それが嬉しくもあり、怖い。彼女の前では、隠した自分も見透かされてる気がして。

「…大丈夫よ…ちょっと…先輩達の演技に感動しちゃって…」

感動の涙だったら、こんなに恐怖を感じたりしない。
バレバレの嘘にも関わらず、彼女は何も突っ込まない
黙ってティッシュを差し出す。

「…ありがとう」

後ろ手にティッシュを受け取る。会話が聞こえていたのか前の生徒が振り返る。

「カッコ良かったよね」

そう言ってから彼女は、ハッとし、急に話しかけてごめんねと慌てた。席は前後だが、あまり話したことの無い子だった。名前は分かる。菊池 小春(きくち こはる)。母が好みそうな、可愛い名前。

「…えぇ、とてもカッコ良かった」

私が肯定すると、彼女はパッと表情を明るくした。

「ね、ねぇ、小桜さん。小桜さんダンス得意かな」

一緒にダンス部入らない?と彼女は不安そうに言う。
母に聞いてみる。
そう口から出掛けた言葉を、母の望まない私が押し戻す。
私は、やりたい。踊りたい。先輩達みたいに。
"彼女"が主張する。

「…ダンス…は…あまりやったことがないの。中学の…授業くらいでしか。…だけど…私は…」

"貴女は可愛い女の子なのよ"
"女の子は皆、美しく、可愛くあるべき"
"激しく動いて汗を掻くのは美しくないわ"
魔女の声が反響する。小桜さん?と菊池さんが首をかしげる。

「迷ってるのかな…すぐに決めなくてもいいよ。とりあえず、体験入部もあるし。もし、まだ入りたい部活が決まってないなら一緒に行きたいな」

「体験…入部…」

海菜にも、誘われていた。けれど海菜とは、行けない。
母にも、許可は取っていない。

「ねぇ、菊池さん、ダンス部の体験入部行くなら私も一緒に良いかな」

急に会話に参加してきた海菜に菊池さんが驚く。

「え、鈴木さんも…?」

「うん。まあ、私は一応、演技部に入る予定なんだけど…ちょっとだけ、体験したいんだ。ダメかな」

「あ、ううん…むしろ嬉しい」

嬉しそうに、菊池さんは笑う。可愛い笑顔だった。

「ねぇ、百合香。"君"はどうしたい?」

"魔女のお人形"ではない、内側の私に、彼女は問いかける。
"学校にいる間は魔女は目は届かないよ"
海菜の言葉が、"私"の声を押し出す。

「私は…行きたい」

でも…と否定する言葉を押し戻す。
大丈夫。大丈夫だから。だからお願い。行かせて。
私の中の私が訴える。

「じゃあ、三人で行こう」

約束ね。と彼女は笑い、小指を差し出す。海菜が言葉を繰り返し、小指をくっつけた。躊躇う私に、海菜の言葉が反響する。
大丈夫。学校に魔女はいない。私も恐る恐る、2人の小指に小指をくっつけた。


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