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呪いを解いて
【ガールズ 恋愛小説】

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騎士と王子-1

「おはよう、望(のぞむ)」

「おー、王子、おはよう」

クラスの離れてしまった同じ中学の友人―星野 望(ほしの のぞむ)―が、駅前で待っていた。柱に背中を預けてスマホをいじっていた彼は、私に気づくなりスマホをポケットにしまい、おっすと手をあげる。
彼とは中学で出会い、部活が一緒で仲良くなったのだが、王子(私)の側にいることが多いからと、中学時代はナイトと呼ばれていた。
割と、女の子のファンも多かったが、告白は全て断っていた。
本命の女の子が居ると、噂で聞いたことがあるが…。…私は彼からその本命の話を聞かされたことはない。何となく、予想はつくが、私からは言えない相手だ。

「…そういやもう一週間経つけど、クラス、どう?友達出来た?」

電車に揺られながら、彼が私に問う。まるで親が子にするような質問だなと思いつつ答える。

「ん…うん。出来たよ。新入生代表で挨拶してた子いたろ?あの子」

「ああ、あの子か…目立ってたなぁ…小桜さん…だっけ」

お前と並ぶと余計に目立ちそうだなと彼は笑う。

「綺麗だもんねぇ。彼女。やっぱりモテるんかな」

「さぁ。俺はタイプじゃないけど」

「君のタイプってどんな人?」

「それは…」

彼が言いかけたところで、電車が止まる。扉が開くと、彼女が乗り込んできた。私には気づいていないのか、挨拶もせず座席に座る。

「百合香。おはよう」

声を掛けると、彼女は驚いたように私の顔を見上げた。

「お、おはよう。ごめんなさい、ボーっとしてて…気づかなかった」

少し疲れているようにも見えた。大丈夫?と聞くより早く、彼女が私の隣に居る彼に視線を向け、問う。

「…そちらは友達?」

「うん。そう。星野望。中学からの付き合い」

「…付き合ってるの?」

それもよく言われることだった。世間的には、男女2人が並ぶとカップルに見えるらしい。彼女に言われると、少し悲しいが。
友達だよと望が返す。そう…と彼女はホッとしたように息をついた。
…何故、そんな安心したような顔をするのか。

「星野望。よろしく」

「…星野くん…で良いかしら。私は小桜百合香。よろしくね」

「ああ。好きに呼んでくれ。ちなみに中学時代はナイトって呼ばれてた」

ナイト?と彼女は首をかしげる。いっつも王子の側にいるから。と私が答えると、彼女はああ。と納得したようにくすくすと笑う。

「よっぽど、仲が良いのね」

「部活が一緒だったんだ」

「へぇ。何部?」

「演劇部。高校も続ける予定」

良かったら一緒にどう?と彼女を誘ってみる。彼女は一瞬だけ驚いた顔をしてから、何か言いかけ、やめた。

「…母に…聞いてみるわね」

「…お母さんの許可がいるの?」

「…えぇ」

暗い顔だった。母親のことは、あまり好きではないのだろう。そんな印象を受けたが、それ以上踏み込むのは失礼だろうと思い、話題を変える。

「…そう。ところで、百合香は中学は何部だった?」

「中学は合唱部」

「へぇ…ピアノ弾けそうだよね百合香」

「弾けるわよ。今も習ってる」

あんまり得意ではないけど。と苦笑いする。

「聴いてみたいな。君のピアノ」

「えっと…そう…ね。貴女の前で弾く機会があるのなら…」

「君の家にはないの?ピアノ」

「ある…けれど…うちに…来るの?」

家には上がらせたくないといった雰囲気だった。気付かないふりをして、ダメ?と返す。彼女は口籠ってしまった。

「…あ、貴女の家にはないの?ピアノ」

「うち?無いよ。親戚の家ならある。けど、わざわざ君のピアノを借りるためだけに行くのもなぁ…」

そういえば、うちの学校の文化祭で合唱祭があることを思い出す。
けれど…。
…いや、私だけのために弾いて欲しいとは、流石に言えない。
自分の感情に、苦笑いする。

「まあいいや。…文化祭で、合唱祭があるから、その時にでも」

「うげぇ…そんなんあるの…?全員参加のやつ?」

「あー、君は音痴だもんねぇ…。残念ながら全員参加だと思う。ああでも安心して。一年生は無い。2年と3年だけね」

憂鬱そうに彼はため息をついた。

「…詳しいのね?」

「一つ上に従姉妹が居るんだ。多分有名人だから、すぐ知ることになると思うけど」

「…有名人?」

「ダンス部の子なんだけど…彼女、スイッチ入ると顔が変わるんだよね」

踊っている時とピアノを弾いているときは、まるで、何かが取り憑いたように表情が変わる。普段はあんなにふわふわしてるのに。
多分、演技をさせても普通に出来ると思う。

「…今度ダンス部の体験入部行こうよ」

「演劇はどうするんだ」

「もちろん、演劇部入るよ。体験くらいいいでしょう?ねぇ、百合香」

何より、彼女に見せてあげたかった。可愛いだけではない女性の姿を。けれど、彼女はまた口籠る。戸惑うように視線をうろうろさせてから躊躇うように「母に聞いてみる」と口にした。

「…君は…」

「望」

自分の意思はないのか?と、彼は言いかけたんだと思う。けれど、それは言ってはいけない気がした。

「…わかった。お母さんに聞いておいて。許可が出たら一緒に行こう」

「…えぇ。聞いておくわ」


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