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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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痴漢専用車両の在り方-2

『また0点。いーい!あなたは利用したんじゃなくて頼ったのよ。弱い女が人を頼るのは当たり前じゃないの!』

「頼った…」

その言葉を初めて聞いたように陽子もその言葉をつぶやいた。

『そうよ。頼ったの。それともなに?あなたは自分が強いとも思って上から見てたの?』

陽子がそんな女ではない事は陽子と接した全員が知っている。それでも由香里は敢えて突き放す言い方をした。画面を通して星司が由香里に目配せして促すのが見えたからだ。

陽子は自分が強いなんて思った事はなかった。実際はその反対で、子供の頃からクヨクヨと悩んでばかりいた。ただ各務家の育ちが影響してそれを見せない技を身に付けていただけだった。

「強くなんかないよ。あたしは弱くて、狡くて、親友が死んで喜ぶ闇がある最低の人間なのよ」

『はい、また0点。闇のない人間なんて居ません。陽子さんが闇人間だって悩むなら、ここに居る全員が悩まないといけないことになるのよ』

「でも、あたしみたいに親友が死んで喜ぶ人は居ないでしょ!」

陽子は顔を上げて、真っ赤な目で画面の中の由香里を見返した。

『ホントに極端ね。いいでしょう。あなたは悠子さんが亡くなって喜んだ。全く悲しみもせずに高笑いした。これでいい?』

その陽子を揶揄する言葉に、成り行きを見守っていた雄一が引っ掛かった。

『由香里先生、それはないですよ。姉ちゃんが死んだ時、陽子さんはどれだけ悲しんだか』

『手島さんは黙ってて!』

雄一の言葉は普段はおっとりしているはずの寛子によって一蹴された。雄一は寛子に反論しようとしたが、陽子の横で首を振る星司に気付いて口をつぐんだ。

(そういう事か…)

『ごめんね、手島さん。でも今手島さんが言ったとおりだと思うよ。陽子さん、あなたはその何倍も何十倍も悲しんだはずよ。喜んだって?悲しんで悲しんで、ぽっかり空いた心にホンの僅かに浮かんだだけなんでしょ』

寛子は自身の夫婦関係で苦しんでいた時の体験を思い返しながら言った。苦しみであれ悲しみであれ、極限まで突き詰めると心が助けを求めて色んな考えが浮かんでくる。その事を寛子は自身の体験を通して知っていた。

『陽子さんの事だから、そんなちっぽけで微かな想いも、しなくてもいいのに分析したんじゃないの。心に刻みつけながらね』

『星司さん、あなたなら過去の記憶も辿れるんでしょ。ほら、浅見にやったみたいにやってくださいよ。その喜びは悲しみに比べてどれほどのものだったのかを、客観的な目で陽子さんに教えてほしいの』

寛子の言葉を由香里が引き継ぎ、陽子が分析しやすいように星司に助言を求めた。

「わかりました。陽子、いいな」

星司が対象者の過去の記憶を辿れば、その影響で対象者の記憶は一時的に鮮明になる。星司は忘れたい事まで思い出させる事に陽子に同意を求めた。

陽子は震えながらも頷いた。星司は陽子の肩に手を伸ばしながら、ふと、ゲスト達が映る画面に目を移した。

その中に良子と拓哉の姿も認めた。何が起こっているのかわからない2人は、怪訝そうにしつつも黙って成り行きを見詰めていた。星司は画面から視線を外して陽子の華奢な肩に手を置いた。

触れた部分が熱を持ち、素肌を通して陽子の記憶が血流のように流れてきた。それは星司にとっても辛い記憶だった。

しばらくして星司はポツリとつぶやいた。

「これがそうだな…」

『どうなんですか?』

寛子と由香里が同時に口を開いた。

「寛子さんが仰るとおり、悲しみに比べると僅かなものだ。それよりもそれに対する罪悪感が遥かに大きい。ついでに言えば、悠子が帰ってきた時は喜びに満ち溢れていたけど、日が経つに連れて、また罪悪感が増えてきている」 


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