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梅雨色の浄化
【ガールズ 恋愛小説】

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梅雨色の浄化-3

「雨にうたれて苦しそうにしている所を私が声をかけたんだけどね…話していたら急に倒れて…。」

それからの事を女性は私の事を気遣うように言葉を選んで私に話しているのが感じられた。
…意外に優しい人らしい。

「何の事情かは私にゃわからないがね…。」

紗香さん…待ってたんだ。
もう何日も降り続けている雨がまた強くなった気がした。


 「今日も雨が凄いなあ…。」
窓の外を眺めてから私は一人呟いた。

そしていつものように出かける準備をする。
濡れても良いように黒い服を着て靴をはいたらまるでお葬式に出るような服装になってしまった。

公園のベンチに腰かけると酷く寒気がした、紗香さんも私を待っていた時はこんなにも寒かったのだろうか。

「ごめんなさい…。」

誰も聞く人は居ないというのに私の口からは声が溢れていた。
喪失感が私を支配していくのを改めて感じながら私は思う…私にとって紗香さんは大きな存在になっていた事を。
私は社交的ではない性格からか特に異性と付き合う所か、話さえもしなかった。
そんな異性さえ付き合えない私が、同姓に対して好意を持っていたなんて理解することが出来なかったのである。

だけど…今なら解る気がする。

「紗香さん…好きです…。」

私は一目惚れしてしまったのだ。
私の領域に笑顔で入ってきたあの人の事を。

なのに…私は紗香さんを殺してしまったのだ、もう一度逢いたいと言う我儘に付き合わせて…。
それに、私はここに居ると言ったのに風邪なんて理由で行かなかった…。

目から涙が流れていくのを感じる。雨に混ざって身体中に哀しみが巡る。

「う…ひっく……。」

嗚咽が止まらなくなってしまう…体が酷く寒い。
でも…紗香さんはもっと寒かったろう、独りでこの雨の中を待っていたのだから。

「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」

雨の中で私は謝り続ける。いつもなら私の感情を洗い流す雨も今は私の身体を強く打ち付けた。

「お嬢ちゃん!?」

昨日の女性が近付いてくる、結構焦っている感じがする。
私に近付くと掌を私のおでこに乗せて驚いた表情をした。表情が表に出やすい性格らしい…と分析してみる。

「あんた!こんな酷い熱で何でこんな所に…」

紗香さんは待っていたから…。

「人を待っているの。」

心配させないように紗香さんの笑顔を真似してみる。私の心を一瞬で暖かくした紗香さんの笑顔。

「馬鹿!早く救急車を呼ばないと…。」


急に何も聞こえなくなった。
雨の感覚だけが私が存在している証拠のようで、もうその感覚さえ薄れていく気がする。
その感覚を失くさないように、私は目を閉じて雨の感覚に総てを委ねた。雨の水が私の心を洗い流し浄化していく感覚に襲われる。
私の中に有る嫌な事や苦しい事、この世の全てさえ雨が流してくれるように思えた。


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