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天国に一番近い地獄
【学園物 官能小説】

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智の憂鬱-2

「どうだ決まったか? バスケ部、体操部、音楽部に演劇部。えっと、それからどこを見てきたっけ?」
 放課後、歩の部活見学に付き合ってやった智は、教室に戻ってきて向き合って座っている。
「・・・うーん・・・」
「なんだよ。まだ決まんないのか?」
「だってー、特にあれがやりたいとかこれがやりたいとかないんだもん」
「そっかー。急に決めろって言うほうが無理な話か」
 セントカトレア学園の部活動は中等部や高等部でもさほど盛んではない。まして、特別枠で活動している小学生は数えるほどだ。学校の部活というよりも、幼いころからやっている習い事のほうが忙しいためだ。

「うーん。どうすっかなー。あとどこがあったかなー?」
「ねーぇ、先生?」
「うん、どうした?決まったか?」
「ううん。そうじゃなくてね。あのぉ、先生ってクラブやってないの?」
「え? 先生か?」
「うん。私、先生のクラブに入りたいな」
「いや、その先生は。実は何もやってないんだよ。初等部の所属だしな」
「そうなんだ。じゃ、部活なんてやりたくないよ」
「そんな。あ、そうだ。英語部はどうだ?確かお姉ちゃんは英語部だったろ?」
「うーん、でも英語なんてキョウミないしぃ」
「やってみなくちゃ分からないぞ。そうやってあれもできないこれもできないなんて言ってたらきりがないし」
「だって〜・・・」
 歩がクスンと鼻を鳴らす。大きな瞳が涙目になっている。

「ああ〜、泣くな、泣くな。ん〜、どうしたらいいんだよ」
「ねぇ、先生。先生が新しいクラブ作って。そしたら、私そこに入るからぁ」
「え!?俺がクラブを?そう言われても一体なにすれば良いんだよ?」
「うーん、わかんない」
「わかんないってそんな無責任な」
「クラブに入れって言ったの、先生だよ。だから、代わりに先生も部活をやってよ〜」
「う〜、そう言われるとつらいな。分かったよ。考えとくよ」
「やった〜、絶対だよ。絶対約束だよ!」
 無邪気に喜ぶ、歩の姿がなんとなく智には愛しく思えた。

 あーぁ、参ったな。でも、元気は出たみたいだから。ま、いいか・・・

「じゃ、今日はここまでだ。遅くなるといけないからな」
「ええ〜。やだな〜」
 ほっぺをぷくっと膨らまして駄々をこねる。
「そんな、顔しても駄目だぞ。ほら、かばん持って、帰った、帰った」
「は〜い。ごきげんよう、先生」
 智は教室を出ていく歩の後ろ姿を眺めながら不思議な気持ちになった。

 やっぱり俺、最近おかしいぞ。クラブなんて何で引き受けたりしたんだよ? だけど、あの笑顔を見るとやって良かったと思っちゃうんだよ。ああ〜、もうなんなんだよぉ

 以前は無愛想で生徒や児童に優しくしてやる事などなかった。しかし最近は歩に限らず優しい先生だとよく言われるようになった。
「別に嫌じゃないんだけど、なんか。う〜ん、なんかこうモヤモヤするんだよ。」
 教卓について独り言をつぶやく。智の頭からは歩の笑顔が離れなくなっていた。
「・・・まさか。いやいや、そんな事あるわけない。」
 頭をぶんぶんと振って、自らを否定する。
「は〜ぁ。溜まってんだよ、きっと。あーぁ」
 大きく伸びをして智は席を立った。
「・・・エロビデオでも借りて帰るかな」
 そう呟くと、智も教室を後にした。


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