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烙印
【SM 官能小説】

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烙印-6

 あのときほど、あなたは濃密なセックスを、それまでどんな男とも交えたことはなかった。
そして、今に至るまで……。狩野との性交は、これ以上望めないほど鮮やかな色彩に満ちあふ
れた感覚をともない、あなたの心と肉体のあらゆる部分を磨(と)ぎ澄ました。

鞭を打ったあなたの体を、狩野は抱きかかえるようにベッドに押し倒し、手首と足首をベッド
の端々に縛りつけた。彼は飢えた獣のように痛めつけたあなたの体を貪った。それが彼の愛し
方だった。乳房が彼の手で鷲づかみにされ、揉みしだかれ、熱を帯び、痛みを含んだ鞭の条痕
が舌でなぞられ、彼の冷ややかに尖った指先がまるで肉肌を削ぎ取るように喰い込んだ。

彼の腰が腿のあいだを割って押し入り、ペニスが繁みをかき分け、冷ややかに澱んだ空気とと
もに割れ目を裂いて侵入してきたとき、あなたの肉襞が逆上するようにたわめき、彼のものに
狂った貝肉のように絡みついた。彼の腰が烈しく揺れ、ベッドがギシギシと軋んだ。挿入され
たものが漲り、あなたを突き上げ、肉襞を荒し、奥深いところまで貫いた。

そして、あなたが息を吐いた瞬間だった。彼のものがあなたの中からすっと抜けた。抜かない
で欲しい……あなたは肉体の奥から狂おしく叫んだ。彼との繋がりの空白が怖かった。空洞に
収縮するに肉襞の動きは止まることがなかった。

そのとき彼は、不意にベッドの傍のサイドテーブルの煙草を指先で摘まむと火をつけた。それ
がどんな煙草なのかわからなかった。鈍色のケースに入った極めて細い硬質の煙草は黄金色に
巻かれていた。

彼はあなたの火照った体を眺めおろし、何かに憑かれたように瞳を濃くし、煙草を深く吸い込
んだ。あなたに濡れきった割れ目に向って吐かれた紫煙は仄かな甘さを含み、まるで彼の体液
の匂いのようにゆらゆらと甘美な芳香を漂わせた。

彼のペニスを失ったあなたの肉襞は煙に煽られるように喘いだ。まるで貪る餌を失ったように
彼のものの空虚な残像にすがりつき、もがくように蠢き続けていた。その動きはあなたの意思
を超え、肉体の中に自然に湧きあがる無為の情欲に他ならなかった。

煙草の煙は鮮明な糸が薄絹を編むように漂い、深く忍び寄ってくる霧のように繁みをかき分け、
陰毛の根元に絡んできた。


彼は笑った、十分に充ちたりた冷酷な顔で。そして指でつまんだ煙草の先端をあなたの湿りき
った繁みの中に、なぶるように押しつけたのだった。


皮膚に鋭い痛みが走った。悲鳴にならない叫びがあなたの咽喉でくぐもった。烈しい嗚咽が唇
に溢れ、撥ねる小魚のように身体をのけ反らせた。一瞬、煌めいた閃光のような烈しい痛みに
よって、あなたは、自分の中から抜かれた彼のペニスの残像に五感のすべてを集中し、まるで
洞窟の暗闇の中で彼のものを必死で探し求めるように悶え、空(くう)をつかんで喘ぐ肉襞の
すべてをしならせ、収斂(しゅうれん)と弛緩(しかん)を長い時間をかけて繰り返したのだ
った。

そして、かつてあなたが経験したことのない痙攣に襲われると、この上ない淫蕩な高みに収束
したのだった。

胸が波を打ち、呼吸が荒々しく乱れ、収束の余韻はゆっくりと渦を巻き続け、あなたの唇の端
から微かな涎が流れていた。淫らな音が肉の奥底から響き、肌に押しつけられた煙草の苦痛の
余韻は、ひくつく肉襞を冴え冴えと息づかせ続けていた。それは奴隷のようにオーガズムを差
し出したあなたが、これから罰を受ける生贄のように彼の所有物として烙印を刻まれた瞬間だ
った。


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