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烙印
【SM 官能小説】

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烙印-13

夫が出かけた日曜日の昼下がり、夫の書斎に掃除機をかける。きれい好きの夫の部屋はいつも
整然と片づいていた。

なぜかあなたのからだの奥に白い砂が溶けて流れていく音がしていた。それは夫が卵の黄身を
啜る音なのか、その音は耳鳴りのように響き続けていた。いや、それはあの老翁があなたの中
に射精したあと、あなたの陰唇から滴る自らの精液を彼が啜る音だった。彼はあなたの陰毛に
埋もれた烙印を滲ませた白濁液を丹念に、執拗に舐めあげ、気が遠くなるほどの時間をかけて
あなたの太腿の付け根を隅々まで舌で愛撫を続けた。彼の舌に絡むあなたの肉唇が忘れかけた
精液の潤いに充たされ、昇りつめた余韻はどこまでも煌びやかな糸ようにあなたのからだの中
に筋を描き続けた。


夫の部屋のクロゼットの扉が珍しくわずかに開いたままだった。テーブルの引き出しも、本棚
のガラス戸も、寸分も開けたままにして出かけることのない夫にしては珍しかった。
あなたがクロゼットの扉を閉めようとしたときだった。奥に隠されるように段ボール箱が置か
れていた。あなたは何気なくその箱を開く。無造作に重ねられた衣類の上に置かれていた色褪
せた本に目が釘づけになる。


「烙印便覧」……狩野が持っていたほんと同じものだったが、裏表紙に印刷された出版年が明
らかに新しく、さらに図書館であなたが手にした本よりも、もっと新しいものだった。

表紙の裏側には狩野の懐かしい自筆の文字が書かれていた。「二〇××年×月〇日、祝すべき
日 アキオへ……狩野ワタル」


それは、あなたがアキオと結婚した日付だった……。




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