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約束のピンキーリング
【女性向け 官能小説】

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明らかに不機嫌な顔をされ、それでも見てないふりをして
椅子の背もたれに掛けてあった上着を手渡した。

「ほらほら。中村さんがいなかったら電車も乗り遅れちゃうな!行って来い!」

そう茶化す加賀部長をじっと見つめて、岡本主任はカバンを持って歩きだした。

そのまま不機嫌さを隠さないで予定通りの電車に滑り込む。

「中村さん、悪いな。
こんな若造の秘書で。俺の前は誰に就いてたの?」

「三宅部長です」
「ああ、あの人この前デカイ仕事してたもんな」
「はい」
「あの仕事、一緒にやったの?」
「はい」
「だろ?普通は部長クラスだってなかなか個人秘書なんか就かない。
デカイ仕事の時に就くだけだ」

「今回の岡本主任のプロジェクトも若手中心とはいえ、十分大きいと思いますが」
「でも、若手だから、俺何でもできるよ」

こちらをじっと見つめて、今にも私を秘書課に追い返しそうだ。
この人は3つ上の私を秘書として使う事に納得をしていない。

「マジで秘書なんて俺には早いと思うんだけど?」
「・・・・ご期待に沿えるよう頑張ります」

「・・・で?今日の手土産は?」
「先方の奥様の好きな甘納豆をご用意しました」

「へぇ。用意周到。さすが秘書課。奥さんの好みまでデーターにあるんだ」

俺たちはそんなところで戦ってんじゃないんだけど。
とでも言いたそうなその顔は
言葉の羅列とは裏腹に、明らかにそんなデーターに頼っている私を馬鹿にした言い方で

「恐れ入ります」

私も心ない謙遜で応酬する。




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