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株式会社SMRS
【レイプ 官能小説】

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【前編】出所と再就職-3

「お、お前な……いくら女性に酷い目に遭わされたからって、知りもしない奴からいきなり電話かかってきて『はいそうですか。レイプお願いします』ってホイホイ金出す奴がいるか?」
「います! 絶対にいるはずですう!」

身を乗り出し、口を尖らせるマリンカ。俺はその勢いに少し気圧されたが、同時にあることに気付いた。
マリンカの口ぶりからすると、SMRS社はレイプの受注に成功したことは今までに一度もないのだ。
事態の突破口が、見えたような気がした。俺は姿勢を正し、コーヒーをもう一口啜ってから言った。

「マリンカ。どうやらお前の事業計画は、絵に描いた餅のようだな」
「なっ、何を言うんですか、貫太さん!」

気色ばむマリンカに、俺は追い討ちを掛ける。

「SMRS社の、レイプ受注実績はゼロ、そうだろ?」
「そっ、それは……今までは実行役の人がいなかったから営業活動ができなかっただけです! 貫太さんさえ来てくれたら、営業しまくって依頼殺到するはずなんです!」
「俺がいても同じだ。どこの馬の骨とも知れないSMRS社に、金出してレイプを頼む奴なんかいねえよ」
「なっ、何ですって……」

マリンカの顔が紅潮する。それを見計らい、俺は止めの挑発をした。

「違うって言うなら、今ここで営業して注文取ってみろよ。俺がいさえすれば営業できるんだろ?」
「言いましたね? もし注文が取れたら、うちの正社員になってもらいますよ?」
「ああ……もし注文が取れたら正社員でも派遣でもやってやるよ。でも、取れなければそれまでだ。俺は失礼させてもらう」
「いいでしょう!」
「時間を区切ろうか。コーヒー一杯で何時間も粘るのもお店に悪いからな。電話5回かけるまででどうだ?」
「分かりました!」

よしっ。俺は心の中で快哉を叫んだ。世の中にはいろいろな人間がいるから、5000回電話をしたら、ひょっとしたら奇矯な奴につながるかも知れない。だが、5回の電話で注文を取るのは絶対に無理だ。俺は濡れ衣を着せられる心配もなく、無事にマリンカから逃げられるだろう。

俺はカップを手に取り、残ったコーヒーを飲み干した。それにしても、初めて会った美人にうかうかと付いてきてしまったせいで、時間と精神力を大分浪費してしまった。やはり世の中にうまい話などない。これからは気を付けないと……

マリンカはスマホを操作し、画面を食い入るように見ている。営業先を物色しているのだろう。既に心に余裕ができていた俺は、気軽に彼女に話しかけた。

「どうだ? 女性に酷い目に遭わされた奴いたか?」
「静かに! 営業中です!」
「あ、ああ……悪い」

語気鋭く俺を黙らせるマリンカ。やがて営業先が見つかったのか、とうとう電話をかけ出した。

「もしもし? お世話になってますう。私い、SMRS社のマリンカ薄野と申しますう。SNSでの御投稿を拝読しましてえ、レイプ代行の御案内をさせてほしいんですけどお、今お時間いいですかあ?」
「ぶっ!?」

コーヒーが口の中にあったら、テーブルに噴いていたかも知れない。いくら何でもそんなストレートな持ち掛け方はないだろうと俺は思った。SNSの一般ユーザーを装い、投稿を読んで同情したとかなんとか言いながらまず信用させるのが常道じゃないのか。

これなら5回あっという間だな。せっかくだから帰る前に、もう一杯コーヒーを頼もうか……そう思ったとき、俺は違和感を覚えた。
マリンカが、ガチャ切りされていないのだ。出だしがあの内容だったにも関わらず、通話が続いている。

「……はい……もちろん秘密厳守ですう。料金はあ、基本コースとオプションがありましてえ……」

まさか、一発目で奇矯な奴につながってしまったのか。いや、そんなことは考えにくい。多分先方が暇人で、かつ悪戯電話の相手をするほど度量が広いのだろう。

「ありがとうございますう。それじゃ指定の口座に前金とお、ターゲットの情報をメールでお願いしますねえ。はあい、今後とも御贔屓に!」
「…………」

通話が終わった。
マリンカが俺の顔を見て、ニカアッと笑った。

「聞いてましたね? 貫太さん、初仕事ですよお」
「……悪戯電話だと思って付き合ってくれたんだろ。本当に金を振り込んで来る訳がねえ」
「ふふん。ふふふ〜ん」

鼻歌を歌いながらスマホを操作するマリンカ。しばらくすると画面を見せてきた。

「嘘、だろ……」

おそらくマリンカの口座なのだろう。時刻はたった今、5万円が振り込まれていた。

「なあ、おい、ちょっと待ってくれよ……」
「貫太さあん」

動揺する俺に、マリンカは美しい顔をずいっと近づけ、言った。

「吐いた唾、ごっくんしちゃ駄目ですよお?」


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