投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

女王と俺の奇妙な日々
【ファンタジー 官能小説】

女王と俺の奇妙な日々の最初へ 女王と俺の奇妙な日々 38 女王と俺の奇妙な日々 40 女王と俺の奇妙な日々の最後へ

愛の深さ-1

何もしなくても時間は過ぎていく。自宅に戻ってたちまち三日が経っていた。何もすることができず、日が昇っては沈むばかりである。
俺の行為の全てが無益で無価値だという思いが、何かを想起する度に現れる。それを紛らわそうと酒を飲み、睡眠薬も併せて飲んでみるが、楽にならない。心に加え、体からも疲れの取れることがなかった。
女王の腰巻きを嗅ぐと切なくなった。鼻に当ててにおいを吸い込んでも、気持ちが付いてこない。
外は雨の降りそうな曇りだった。俺は、当てなく出かけることにした。日曜日だった。
街に出て驚いた。人種の違い、男の存在。自分が外国に来たように俺は感じた。
この世界に係累が無くなったのだ。仕事もできない。趣味にも興味が湧かない。周囲への親近感も消えた。陰鬱さだけが心に存在する。体は不愉快だ。
公園の横を通ったとき、急に後ろから声を掛けられた。子供の声だった。
「ナンジデスカ?」
俺の町にはたくさんいるブラジル人らしい女の子の訛りに、俺は目が覚めた気がして振り向いた。顔がどこかトパルミラに似ていた。寒いのに袖なしの青いシャツを着ている。
「Estas la deka. 」
(十時だよ。)
俺は反射的にエスペラントで言ってしまった。
小学生は一度怪訝な顔をしてからにこりとし
「Dez horas? 」
(十時ね?)
と聞き返した。下手なポルトガル語だと解釈したのだろう。俺に教えている雰囲気なのが、歳下の子を包むような優しさだった。
「そう、十時。」
違っているといけないと思い、日本語で言い直した。
「Muito obrigado! 」
(どうもありがとう!)
小学生は笑顔で手を振ってくれたが、背を向ける一瞬、肩口から胸の膨らみが乳首の先まで覗いて揺れた。
哀しみと慕わしさとが俺の胸に沸き返った。涙が止まらなかった。トパルミラなら、こんな俺でも、体と心で優しく慰めてくれるに違いない。清しさの中へ泥沼から俺を引き上げてくれるに違いない。


女王と俺の奇妙な日々の最初へ 女王と俺の奇妙な日々 38 女王と俺の奇妙な日々 40 女王と俺の奇妙な日々の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前