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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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お別れのとき-2

雄一も何となく悠子の気配と、そして悠子が去って行ったことを感じていた。

「それにアニキは…」

寂しそうにした雄一が、さらに暗い顔をして自分の後ろに視線を向けた。しかし、その表情が見る見る内に喜びの表情に変わっていった。

「大丈夫みたいだ。ほら、今、目を覚ました」

優子が雄一の視線を追うと、軽く頭を振りながら自分を探す星司の視線と重なった。

「星司さん!」

叫んだ優子は立ち上がろうとしたが、身体が重くて動かなかった。

「えっ?」

初めて自分の状況に目を向けた優子は驚いた。自分が誰かを抱き締めていることに気づいたからだ。

自分の腕の中の者がゆっくりと動き始めた。

「優子ちゃん。危ないから離れて!」

慌てて叫んだ雄一が、優子からその者を引き離そうと、重たい身体を動かした。

「大丈夫よ」

優子は自分の腕の中の者を優しく見つめた。

「あれえ?おねえちゃん、おっぱいでてるよお。おとなはブラジャーしないといけないんだよ」

舌足らずの口調の美咲が優子を見上げて言った。

「うふふ、本当ね。おっぱい隠さないとね」

優子は幼児返りをした美咲の頭を優しく撫でた。

その様子に奇異な目を向けていたプレイヤー達に優子は言った。

「もう大丈夫。本当の美咲ちゃんはね、とても優しい子なんだから」

「うふふ」

美咲は擽ったそうに首を竦めた。

ついさっきまで敵意剥き出しで襲いかかっていたのに、今は無垢な子供のような美咲の様子に周囲の者は戸惑った。

「どういうこと?」

雄一が疑問を口にすると、陽子が代わりに答えた。

「美咲ちゃんはね。各務家につきまとう闇に操られたの」

「『各務家につきまとう闇』?なんですかそれ?」

陽子は説明を続けた。

「昔ね。力があるけど邪な心を持った故に各務家を追放された者が居たの。逆恨みをしたそいつが当時の当主の精神を崩壊させて各務家を乗っ取ろうとしたのよ」

「そんなことが各務家に…」

「けど今回の優子ちゃんみたいな女性に阻止されて封印されたの。でもね、女性の命懸けの封印も完全じゃなくて、そいつは自分の子供に宿ってしまったのよ。あとは子々孫々宿り続けて表に出てくる機会を窺ってきたわけなの」

「じゃあ、幸田美咲は各務家の遠い親戚っていうわけか。でも、各務家って能力のある血縁はしっかりと把握してたはずじゃなかったっけ?」

曲がりなりにも雄一は各務家の秘書だ。それくらいは知っていた。

「どんなに管理してても限界はあるわ。各務の闇の子孫がどれくらい居るかはわからないし、それに強い能力者は隠れるのも得意だしね」

「なるほど」

星司の実例を知る雄一は納得した。

「でもそのせいで、美咲ちゃんを今回の被害者にしてしまった…」

陽子は心細げに優子にしがみつく美咲を見つめて悲しくなった。各務の闇が美咲を追い込むために、周囲の者に働きかけて辛い環境を作っていたからだ。

「でもどうして今だったんですか?」

「それはね。星司が【卓越した者】だったからよ。【卓越した者】の崩壊は各務家の能力者を巻き込むの。星司の能力ならばそれ以上に能力が芽生えてない血筋も巻き込めるって考えたのね。将来、他に能力者が出てきて自分を排除しないようにね」

説明を終えた陽子は、改めて今回の事態を納めた当事者を見つめた。


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