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露出少女と公務員
【大人 恋愛小説】

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衝動-1

食材を買いに近所のコンビニエンスストアへ出かけた夕方、同僚二人と偶然会った。
「どうだ、調子は。」
「はい、部長、まあ、ほとんど寝ています。」
「いいよな、俺も休んで寝てたいよ。」
そう言いながら、じろりとこちらを短く見つめたもう一人のほうが、スポーツ新聞を手に取った。私はワインを数本提げて持っていた。休職中の病人に有るまじき体たらくだと思われるのも無理はない。部長は私の買い物を明らかに気にしつつも、所詮は他人事と割り切っているらしく、仕事上がりの気楽さを隠さぬ様子で、自分は菓子パンの袋を籠に入れた。
「ゆっくり休んで早く治しなさいよ。」
「はい、すみません。」
外に出るべきではなかったと思った。恥ずかしく、切なく、申し訳なく、おまけに職場が憎らしくなった。

役に立たない人間、ただいるだけの人間。だが、生きている限り、人に迷惑はかける人間。
私は人の迷惑であり、役にも立っていない。
そんな存在を肯定できる人もいる。例えば重度の知的障害者の親だ。生きているだけで子供に価値があるとその人たちは言う。だが、一般人にもその人達は同様に思うのだろうか。
自分が自分の価値も意義も見出せず、汚点と無力感ばかり見える時、どうしたらいいのか。どうにもできないのだ。
そのどうにもできない自分が、異国の美しい少女に、存在と行為を心から喜ばれた。人に喜んでもらうことは、生きる上で最大の励みになりうると、今だからこそ知った。
したい事をして、人から認められる。思えば単純な「自己実現」の構図だろう。
したい事をしても認められない。したくない事をして認められる。したくない事をして認められない。何もしないのに認められる。何もせず、認められもしない。
皆、無理がある。
私がして喜ばれたのは、善行から程遠い下品な痴漢行為だった。確かにリディヤを褒めはしたが、事実上、要求したのはその裸である。リディヤが本当のところ、人に裸を見せたがっているのだと、私には信じられない。それでもリディヤは好きで送ってくるし、私はもちろんリディヤに喜んでいる。
互いが互いにする事を喜び合うのなら、その行為は、何であろうと善だと呼べるのではないか。
しかし、会って、体の関係を超えたとき、互いの病窟が開いて破滅していく予感が私にはあった。ところが、その予感に従い妥当な行動を取る意志や感情も、たった一つだけ生まれた衝動の是非を問う理性も、鬱病の私にはなかったのである。
反射にも似た無意識のうちに、私は端末から航空券の手配を行なっていた。


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