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俺は他人棒
【熟女/人妻 官能小説】

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富樫奈穂子(36)-3

 疲れが吹き飛び覚醒した俺と奈穂子は、改札を出てすぐのところにあったチェーン店のカフェで向かい合っていた。
 完全に弱みを握られた格好の奈穂子は、俺の前にあって蛇に睨まれた蛙そのものだった。
「とりあえず、名前は伏せることにしますけどね。書きたい記事があるんで、取材だけさせて下さいよ。タイトルは『突然の失態! 公衆の面前で臭いオナラをしてしまったら』とでもするつもりなんですけど」
 もっともらしくメモ帳を手に、いっぱしのライターぶって俺は言った。
 さきほどの放屁を蒸し返されるたび、眼元をうっすら赤らめる奈穂子。恥じらう風情は色っぽいが、百年の恋も冷めかねない臭さだったのは事実だ。
 もっとも、それで興奮した俺は異常な変態かもしれないが。
「残念でしたよねぇ。もっと人の多いとこだったら他人のせいみたいに誤魔化して知らん顔出来たんでしょうけど、周りに俺しかいない空間で、しかもモロ顔にぶっこいてくれましたもんね」
「本当に、許して下さい……」
「その場でそうやって謝って貰えたらこっちの気持ちも違ったんですけどね。パニクっちゃったのかもしれないですけど、簡単には許せることじゃないですよ。大々的に告訴してもいいレベルの臭さでしたから」
 大袈裟に脅すと、奈穂子はシュンと縮こまってしまった。
 放屁くらいで告訴なんか不可能だろうが、この脅しは意外に効き目があった。
 音楽の世界ではそこそこ名が通っているらしい奈穂子なので、騒がれるのは困るということだろう。
「まあ、そこんとこ詳しく聞かせて下さいよ。オナラしてしまって、逃げ出したくなった心境なんかを」
「心境って……とにかく恥ずかしくて」
「ですよねぇ。ブホッとでかい音立てて大量のガス噴射でしたもんね。我慢出来なかったんですか?」
 露骨な物言いでいじめると、奈穂子は顔を両手で覆った。泣き出す訳ではなく、とにかく恥ずかしくてまともに俺のほうを向けないようだ。
「大事なとこなんで是非お聞きしたいですね。肛門括約筋の緩みなどによる突然のアクシデントなんて話だと、どんな人も無縁じゃありませんから。俺みたいな被害者を減らすための検証、対策に繋がる記事になりますんで」
 我ながらよく口から出任せにそれらしい言葉が出てくるものだと感心する取材テクニックだ。俺の頭には、ひたすら羞恥責めで相手のまんこを濡らし、その気にさせていくことしかない。
「あの……お腹が張った感じで、ずっと我慢してたんですけど……」
「ガスが溜まっていた、と。でも我慢しきれなくて出ちゃったんですね。それだけガスが溜まりまくってたとなると、食事などにも原因がありそうですけど、昨夜は何を召し上がりました?」
 ペンを走らせる俺。名目で行っている取材ではあるが、実際に記事として仕上げ小遣い稼ぎにすることも忘れちゃいない。
 下らないネタほどユーザーは飛びついてくれるから、これだって案外モノになるかもしれないのだ。


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