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K
【二次創作 その他小説】

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K-2

最近体がダルい。
食欲もない。
薬を買うお金もないけど、あいつが僕の薬、元気の素になってくれた。
眠る時はいつも僕の腕に寄ってきてチョコンと頭を乗せて眠る。
しばらくして気が済むとそっぽを向いて行ってしまう。
朝も昼も夜もあいつが僕をきっと支えてくれていた。
吐き気がして目が覚める。体が冷たく感じる。
自分のことは自分が一番よくわかる。
どうやら重症のようだ。
力の入らなくなった腕で必死に鉛筆を掴んで、故郷に残してきた恋人宛てに手紙を書きなぐった。
震えて字にならない文字たち。
「HOLLYNIGHT。おれは長くないみたいだ。
いつも一緒にいてくれてありがとう。
最後のわがままを聞いてくれ。
この手紙を渡してほしい人がいるんだ……」

目蓋が重くなる。
眠りが僕を誘う。
あいつの首輪に手紙を括り付けてあたまをやさしくなぜた。
ありがとう。
さようなら。
目を閉じた。
おれに名前をつけてくれた優しいあいつが動かなくなった。
おれに最後の願いを託して逝ってしまった。
おれは走る。
走る。
走る。
今まで愛なんて知らなかった。
愛されても捨てられるのが恐かった。
だから独りでいた。
変り者のあいつはたくさんの愛をおれにくれた。
惜しみなく。たくさん。
最初はくすぐったくて受け入れられなかったけど、
居心地のいい場所をくれた。
走る。
途中でみんながおれに叫ぶ。
「不幸の使者だ」
と石を投げられた。
なんとでも言えばいいさ。
おれには名前があるから。
消えない誇りと名前をもらったから。
生まれた意味があるなら、あいつのため
今このために生まれてきたんだろ。
役たたずのおれでもできることがあるって信じてくれたから。
足はもう感覚もなくなってきたし、体中がきしむ。
走る。
目を閉じればあいつの顔が浮かぶから。
あと少しだ。
あと少し。
まだ走れるよ。
痛くないよ。

見えてきた。
あそこだ。
民家を発見した。
あと少し。

庭に入ると安堵から急に体が重くなる。
最後の力でミャアミャア鳴いて猫は倒れ落ちた。

彼女が猫を発見したのはそれから1時間後だった。
猫はもう冷たくなっていた。
手紙にはこう記してあった。

「突然の手紙で驚いていることと思います。
急にいなくなってしまってたくさん心配も迷惑もかけてしまった。
いままで心配かけてごめん。
おれはもう治らない病に体を蝕まれているらしい。
だから、最後に君に謝りたくて手紙を書いたよ。
今まで君は僕を支えてくれた。そんな気持ちに応えられず、随分とさみしい思いをさせてしまった。
君の幸せを願って
生涯を終えるまで君を想ってるよ。
幸せになってくれ。
ありがとう。
君を幸せにしてあげられなくてごめん。」

彼女は小さな騎士に
“K”の文字をつけてあげた。
聖なる騎士を埋めてあげた。
HOLLY KNIGHT.


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