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「悪魔の少年」
【ショタ 官能小説】

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㉒窃盗事件-1

㉒窃盗事件




多摩川は調書を作成しながら変な違和感を感じていた。香織は「最初の一撃は腕で受け止められ逃げようとしたところで
後ろから一撃を加えて倒した。」と供述している。
しかし検視官の報告書には「腕の防御創と致命傷の脳挫傷以外に首筋への打撃痕がみとめられる。」とある。
若い田川刑事は「素人の女性が人を殺すとなったら半狂乱じゃなかったでしょうか。そうでないと殺人なんて出来ないと
思うんです。そうなれば犯行時の記憶も曖昧になるような気がします。」
証拠はそろっている。本人も自供している。自供の裏付けも取った。でも検察に送れないのはこの食い違いだ。
「金属バットで殴ったのは二度で間違いないのか。もう一度よーく思い出して下さい。」「はい二度で間違いありません。」
「本当は三度じゃないのか?」「私は正直に自白しているんです。そんなところで嘘をつくはず無いでしょう。」
言われてみればその通りだ。打撃が二度なら罪が軽くなる訳ではない。
もう一度香織を犯行現場へ連れて行ってその時の模様を再現させた。
久永役の田川刑事にプラスティックのバットで殴りかかる。右手の腕でこの一撃を受けとけ室内の方へ逃げる。
ドアが半分開いたところで止めの一撃だ。その後人の気配を感じバットを放り投げて一目散に逃げた。
供述通りだ。取調室に戻り打撃が2回か3回かの攻防が続く。多摩川も田川と同意見で香織の記憶違いだと思っている。
そしてとうとう「3回かもしれない」と言う供述を得た。翌日さっそく検察庁へ書類を提出した。
これで完璧に一件落着し捜査本部も解散になった。
その日は数人の刑事たちと居酒屋で労をねぎらいあった。「乾杯。事件解決おめでとうございます。」
誰かが言った。「しかし女の執念って恐ろしいもんですね。10年以上たってもその恨みは薄れないんですね。」
「そうだよ。俺なんか15年も前の浮気の事いまだに女房に言われるよ。」みんな笑った。
「あのABC印刷の奥さんはどうしたんだろうね。」「松山の爺さん落ち込んでいるだろうな。」話は尽きない。
みんな苦労もしたが完璧な捜査で事件を解決した事に酔っている。
ただ多摩川の心には打撃を3回に誘導(?)したかも知れない気持ちがのどに刺さった小骨の様に残っている。
翌日は溜まりに溜まった書類作成に打ち込んだ。田川は他の事件の張り込みに駆り出されたようだ。
書類整理もほぼ終わりかけた3日目、手提げ金庫が盗まれたとの一報が入り捜査三課の連中が飛び出していった。
残業している時、林警部がふらりと立ち寄ってくれた。「多摩川君、遅くまでご苦労様です。」
「林君も手提げ金庫の事件で忙しいんじゃないのですか?」「いや、もう解決したと言ってもいいくらいですよ。」
「犯人が捕まったのですか?」「それも時間の問題ですよ。現場には指紋がべたべた残っていて犯人は直ぐに特定され
ました。例の牧村美容室に忍び込んだ奴ですよ。」「彼は釈放されたのですか?」
「そうなんです。4軒の家に忍び入りましたが盗んだのは2軒だけでそれもTシャツ1枚と缶ビール1本だけなんですよ。
初犯であり自首してきたことも会って罰金刑でけりが付きました。その時の指紋採取が今回役に立ちました。
現在逃走中ですが明日にでも逮捕出来るでしょう。」
「捜査三課の事件は決着が早くていいですね。」「ただ一課と違って発生件数がべらぼうに多いですからね。」
「お互い大変だよね。僕も今日はこれくらいにして帰宅するよ。君も帰るんだろう。」」
「いや。仲間が犯人の行きそうなところへ散らばっているのでここで連絡を待つよ。」



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