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「悪魔の少年」
【ショタ 官能小説】

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Q捜査の前進-1

Q捜査の前進



捜査一課はスーパー招致の反対派の主だった連中に矛先を向けていた。
商店街の会長であった松本精肉店の親子にはアリバイがあった。
でもその他にも副会長や会計の人達など強硬派は沢山いる。
聞き取りは若い田川刑事に任せて多摩川は全神経を集中してその感触を確かめていた。
言葉や表情からの感触で判断するのは刑事の勘に近いものだが多摩川の感触で解決した事件も多々あるのだ。
アリバイが成立した者もいるし多摩川のアンテナに引っかかる者も今日はいなかった。
引き続きタレコミのあった似顔絵のそっくりさんへの面会だ。
この頃になるともう期待よりもダメもとの感覚の方が強い。
そして三軒目のお宅を訪ねた時、田川刑事が「この家前に来た事ありますね」と言った。
なるほど久永と権藤麻紀子の不倫を教えてくれた少年の家だ。
そして言われてみれば少年のお母さんは似顔絵の女に似ている。
「こんばんわ。」例によって聞きこみは田川に任せ多摩川は五感を研ぎ澄まして聞いていた。
何の収穫もなく帰り際に頭を下げた時、膝に置かれた彼女の左手が目に入った。結婚指輪を小指にはめている。
(あ、誰かと一緒だ。誰だったかな。)小指に結婚指輪をはめた手や袖の柄まで覚えているのに誰だか思い出せない。
署へ戻る途中もずっと考えていたがどうしても思い出せない。
事件の関係者以外に友人や知人まで思考の範囲を広げてみたが思い出せなかった。
のどに小骨が刺さった状態ではあったが翌日はもう一度証拠品の保管場所に向かった。
「当店では裏ビデオの販売はしていません。」というチラシや古物商の許可証などがファイルに納められていた。
証拠品は一通り調査をし怪しいものは見つからなかったはずだ。
なのに今またこうして二人の刑事が調べ直している。
それは捜査の行き詰まりを意味しているのに他ならない。
「田川君。ちょっと休憩だ。缶コーヒーでも買ってきてくれよ。」
「まいったな。下手をすればこの事件お宮入りだぞ。」缶コーヒーを飲みながらついに多摩川が弱音を吐いた。
「警部。この事件は僕が待望の刑事になって初めての事件なんです。
これが解決出来なければ僕は刑事なんかやめてもう一度
所轄の巡査に戻る覚悟なんです。
簡単に諦めないで下さい。」若い田川にそう言われて再び戦う心が芽生え元気よく立ち上がった。
「そうだ田川の言う通りだ。犯人がどこかにいるのは間違いないんだ。」
落ちたファイルを拾おうとした時多摩川の眼は書類に釘付け
になってしまった。「古物扱い許可証 大谷史郎」 見落としていた。
古物商の許可証は久永光輝だと思い込んでいたのだ。だが違った。本名の大谷史郎名義だった。
「もしこの許可証を見た人がいるなら彼が大谷史郎だと知り得たはずだ。
しかし久永も簡単に人目のつく所には置かないだろう。」
「警部。でもこの許可証には画鋲の跡があります。壁に貼っていたのではないでしょうか。」
「いや。もしそうならこの許可証はもっと日に焼けて黄ばんでいる筈だ。それにほこりの一つも付いてないよ。」
「人に見せたくない許可証を張り出すのはどんな時だろうか。」「それはお上の調査がある時でしょう。」
「でも古物商には飲食店の営業許可証のように提示義務なんてない筈だよ。」
「うーん。分からないな。」考えながら久永書店に向かった。
来月からは新しい店が開店するので現場での調査はこれが最後になるだろう。
犯行現場の店や裏庭はもう何度も調査したはずだ。
本やDVDなどほとんどは問屋が引き取ってしまったが棚の上には薄汚れた商品が散乱していた。
「田川君この白無垢のDVDは何だろうね。」「「えっ、警部知らないんですか。それは裏ビデオですよ。」
「そんな物売ってもいいのか?」
「勿論駄目ですがネットで簡単に入手できるしこっそりと売っているお店も多いらしいですよ。」
「久永も客を見て売っていたんだろうな。でも誰かにチクられたら大変な事になるよ。」
「警部それだ。警察の捜査が入るのは古物商のチェックでなしに不法ビデオの調査だ。」
署に戻り不法ビデオ調査の行われた日時と相手を調べた。
あった。久永書店。半年ほど前だ。担当刑事にその時の様子を聞いた。
「タレコミがあったんですよ。無視出来ないので訪店しました。
そして厳重注意という事で処理しました。」「その時古物商の許可証を調べなかったですか?」
「ええ。中古のDVDがあったので確認し許可証を壁に貼る様に指導しました。」
四国に大谷の姉という女が現れたのはその直後だ。
多摩川の頭脳はフル回転していた。
「そうか分かったぞ。田川君明日もう一度四国へ渡るぞ。今夜はゆっくり休んでくれ。」



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