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美雪
【学園物 官能小説】

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美雪-16

 「冗談で言っただけでしょ」
 「そうか? 柳田がガックリ来てるぞ」
 「まさか。本気にしてはいませんよ」
 「そうよねえ」
 「とか言って」
 「何がとか言ってよ。大体自分の妹を縛ってレイプしろなんて言う兄さんがいるのかしら」
 「レイプなんて言ってない」
 「縛ったらレイプと同じじゃない」
 「そういうのを喜ぶ女もいるんだ」
 「あのピンクのセーターの人は喜ぶの?」
 「ああ、あれは縛ってムチで打たないと感じない女なんだ」
 「嘘」
 「俺くらいのベテランになると女もそういうベテランでないと駄目だな」
 「不良ぶって」
 「お前何かと言うとピンクのセーターを持ち出すけどな、あんなのは単なるSFだ」
 「SFって何? 空想で付き合ってるっていうこと?」
 「何だそれ? SFってのはセックス・フレンドのことだ」
 「キャー」
 「何がキャーだ」
 「ピンクのセーターって誰のこと?」
 「ああ、武蔵丘高校のやつ」
 「そんな所の女の子と付き合ってるの?」
 「ああ」
 「どうやって知り合ったの?」
 「何となく」
 「何となく? どうしてお前ってそうもてるんだろ」
 「やっぱりテクニックじゃないか」
 「だからどういうテクニックなのか教えてくれよ」
 「催眠術を使うんだ」
 「催眠術? お前そんなの出来るの?」
 「出来る。誰でも出来るんだ」
 「どうやるの?」
 「女の子に好きになって貰いたいんだろ? 女はどういう男に惚れると思う?」
 「それは格好いい男だろう」
 「違う」
 「それじゃ、どんな男?」
 「女は自分に惚れてくれる男に惚れるんだ」
 「なるほど。そんな気もするし、そうでもないような気もするけど」
 「そうでもあるんだ。どんな不細工な男だろうと、そいつが死ぬ程自分に惚れていると分かれば悪い気はしないだろ? 女なんてそういう気持ちで付き合ってれば向こうも惚れて来るんだ」
 「で、催眠術はどうなったの? 何処で出てくるの?」
 「だから自己催眠だよ。そいつのことを死ぬ程好きだって自分に暗示をかけるんだ」
 「そうすると女にもてる訳?」
 「そう」
 「そんな簡単なこと?」
 「簡単? 分かってないな。お前人のことを死ぬ程好きになったことなんてあるのか?」
 「無いな」
 「だろ? 死ぬ程人のことを好きになるなんて口で言うのは簡単だけど、実際そういう気になるのは難しいことなんだぜ」
 「それで自己催眠をかける訳?」
 「そう」
 「何か凄いプレイボーイだな、お前って」
 「ああ。だけど俺の場合は自然にそうなるんだ。だから特にテクニックを駆使しているというのでも無い」
 「女の子と付き合ってるとそいつのことが死ぬほど好きになる訳?」
 「そう。だけど、そいつが目の前にいる時だけ」
 「目の前にいない時は嫌いなの?」
 「嫌いじゃない。ただ忘れるだけだ」
 「随分都合いい性格してんだな」
 「そうでもない。こういう性格だから単身赴任なんてするときっと離婚するようになると思う」
 「何で?」
 「いつも目の前にいないと駄目なんだ。どんなに好きな女でも忘れちゃうんだ」
 「つまり浮気したくなるのか」
 「浮気ならいいけど、浮気じゃないんだ。本気になってしまうんだ」
 「なるほど。それは便利なようで不便かも知らんなあ」
 「ああ」
 「お兄ちゃんて、そんな浮気性だったの?」
 「だから浮気じゃないって言ってるだろ。俺は常に本気なんだ」
 「だから、つまり直ぐに別の人に惚れてしまう訳?」
 「そうなんだ」
 「それって浮気性ってことじゃない」
 「そうなのか?」
 「そうじゃない」
 「俺はそうは思っていないんだ」
 「自分で違うと思っていても駄目よ」

 病院の前で哲治は妹達と別れた。お母さんに会うと時間が取られると言って美雪が其処で柳田と二人になりたがったのである。甘えん坊の美雪にしては珍しいことがあるものだと思ったが、それだけ柳田のことが気に入ったのかも知れない。尤も、美雪は昨日まで毎日病院に来ていたから、デートの時くらい母に会わなくても良いということなのだろう。


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