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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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真夏の夜=2人っきりの夜(前編)-1

夏休みになった。
受験まであと半年ちょっとなそんな時。
何故かアタシ達は南の方にいた。


『真夏の夜=2人っきりの夜』


事の発端は母さんのある発言だった。

「母さん……何だって?」
いきなりの発言に、アタシと孝之がフリーズした。
「ですから、南の方の別荘でお勉強会をしましょう、と申し上げたのです」
普通に母さんはにっこりとした。
「いやいや、勉強会って……そりゃ受験生だから解るけど」
何故に南の方……、しかも別荘?
というか、南の方に別荘なんてあったかな?
軽井沢には昔有ったけど、あれは『アイツ』が作らせたものだから、もうアタシ達のじゃないしな。
「別荘は買いました」
いや、買った………って。いつの間に?うちって、そんなに金持ちだったか?
いろんな疑問がアタシの頭を駆け巡る。隣の孝之も同じ状態だ。
「せっかくの夏休みですから、それなりの場所でやるのも良いことではないですか?そのために別荘も買った事ですし」
「そのために!?勉強会するためだけに買ったの!?」
「いけませんか?」
いや、いけない事はないと思うけど………って、それじゃ行かないなんて言えないって。
「行きますの?行きませんの?」
そう母さんに問われて、拒否するほどアタシ達は勇気を持ってなかった。


で、今アタシ達は別荘……しかし、実際は見た目も中身も普通の一軒家……のリビングでシャーペンを片手にそれぞれが目指す大学に入るための勉強に精を出していた。
と言っても、アタシと孝之はみんなの勉強を見る立場についていたが。
アタシはすでに大学合格判定は一応Aだし、孝之は大学に進学しないからだ。
孝之は専門学校で服飾のデザインを勉強をするつもりだと言う。
『母さんと同じ方向で、違う道を進んでみたい』
と、夏休みに入る前の進路調査の際に語っていた孝之は記憶に新しい。
で、心中穏やかじゃなかったのが麻衣だ。
キャンパスライフを孝之と過ごす気満々だった麻衣にとって、孝之の言葉は寝耳に水どころではなかった。
いろんな感情が絡んだ末に大喧嘩に発展して、このバカップルも最早ここまでか!?……という所まで行ったのだが、いつの間にか仲直りしていた。相変わらずよくわからん二人だ。
高坂は徳広大学という、それなりに有名な私立の経済学部に進む気らしいし、愛里もこれ見よがしに同じ大学の文学部で国文学を勉強する、と言っていた。
で、憲だが。
アタシは憲がどこの大学に進むか聞いていないのだ。つまりは知らない。
何故知らないかと言うと、お互い話し合って決めたからだ。
『お互いの希望大学は話さないでおく』
そう、決めた。
だから、憲もアタシがどこを目指しているかは知らない。
知れば、必ずアタシは憲と同じ大学に進むだろう。けど、もしそこでは、アタシが勉強したいことができなかったら?
そして、逆の立場も考えられる。
そんな事になったら、目も当てられない。
だからこそ、お互いの希望を秘密にしておく、という約束がなされていた。
でもな、気にならないと言ったら、嘘になる。 と言うか、気にならない方がおかしい。
なのに、憲は平然と勉強してる。憲は……気にならないんだろうか?
………前言撤回。数学やってる憲は全然平然としてなかった。


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