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俺は他人棒
【熟女/人妻 官能小説】

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森崎智美(38)-5

「お疲れ様〜」
 すっかり慣れて、仕事に励んでいる森崎智美だ。彼女が上がるタイミングで休憩入りした俺は、エプロンを外している後ろ姿に声をかけた。
 控室には俺たち二人しかいないので、誰はばかることなく際どいことも言える。
「俺、森崎さんのエプロン姿、好きだな」
「そう?」
「裸にエプロンも見てみたいな」
「またエッチなこと言ってるぅ。やだぁ〜、そういうのが趣味なの?」
「別に趣味じゃないけど、森崎さんだから見たいの!」
 訴えられてもおかしくない発言だが、智美は笑ってあしらうだけだった。
 ますます分からない。その気があるのか、上手く躱して済ませようというのか。焦らされて放置プレイを施されているも同然の状態は、俺を悶々とさせた。
 情事というやつ、モノにするまでのプロセスほど楽しいことはない。なびくかどうか分からない相手を追いかける間の、この何とも名状しがたい心模様。そして、いざ二人きりになって、それまで渇望していた行為に至ったときの快楽。
 焦らされれば焦らされるほど、獲物を捕らえたときの悦びは大きくなる。
 智美もいずれは必ず抱いてやる。そのときの悦びはいかばかりか。考えるほどに、俺の血は滾った。

 毎日のように、智美とは寝る前のメッセージを交わした。
 智美にも常に俺のことを意識させておく必要がある。鬱陶しがる気配が見えれば速やかに一歩下がらねばならないが、今のところその様子はなしと見た俺は、エロ寄りのコメントも挟みつつやりとりを続けた。
 こうしたマメな下準備は、人妻とヤルにあたってひときわ重要なポイントだ。結婚生活が長く、夫とはあまり男女の仲という気がしなくなってきている熟女妻なら、なおさら、男が興味津々でアプローチしてきていることを実感する。そして、乙女の頃に味わったときめきのようなものを胸に芽生えさせてくれれば、こっちのものだ。
 智美のことを女としてギラギラした眼で見ている俺は、そのことをも本人にずばずば言葉にして伝えた。
『今日は、ラーメンにビール! 冷え冷えビールで生き返った〜』
『いいねー! 俺もビール二缶空けたよ。ともちゃん、いける口なんだ?』
 夕飯後のやりとりである。
 おそらく智美は夫と乾杯し、水入らずの食事だったのだろうが、俺とメッセージ中は恋人気分。余計な情報はいちいち書かないつもりだろう。俺も智美のことは「ともちゃん」とニックネーム呼びして、親密さに拍車をかけていた。
『あんま強くないよ? 三百五十のでも二缶飲んだらトロンとしちゃう』
『それってトロンとしてる間に押し倒していいってフリだよね?』
『違いますー! そんなことばっか考えてるの?』
『いつ飲みに行く?』
『さあー、いつでしょう?』
 押しても反発がある訳でなく、ひょいと躱されるもどかしさ。しかし脈がなさそうでもない微妙な感触が、実にスリリングである。
 俺は智美の住所(詳細まではいかないものの、町名は聞いていた)から照らし、適当な店を検索して、その日が来るのを今や遅しと待ち構えていた。当然、飲み屋から直行出来るホテルの場所も考えの内だ。
 ところが、ばっちりと計算をしてお膳立てしてあった俺の企みは、見事に裏切られたのだった。


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