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Overtake goodbye
【姉弟相姦 官能小説】

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A-1

 「まいったな……。」
 休み明け早々、俺は一人、車の中でごちていた。
 混雑を想定して家を出るつもりが、僅かとは言え出遅れてしまい、ラッシュに巻き込まれたのだ。
 (たった数分の差で、この様とは。)
 理由は明白である。夕べは寝付きが悪く、明け方近くに熟睡したおかげで、目覚めるのに手間取ってしまった。
 半年前に入社した、美人且つ、聡明な社員として話題の女性が俺のアパートを訪ねて来たばかりか、その彼女が十八年もの間、音信不通だった同窓生という、予想外の展開に驚かされ、我ながら珍しく興奮したせいも有る。
 唯、長岡こと飯山莉穂との再会だけだったら、喜ばしい出来事として、睡眠不調に至らなかっただろう。
 (そう。問題はその後だ。)
 一本の電話が、無理矢理とは言え、再び亜紀との同居を伝えて来た事に、俺は、眠りに就きながら、ずっと自問自答した。
 あの日から三年半──。「別々の道を歩む事が、お互いが幸せに必要なんだ。」と、そう自分に言い利かせ、亜紀への想いを消し去ろうと努力した筈なのに、あの声を耳にした途端、心の中は全く別の感情が涌き上がった事に、愕然とした。
 (情けねえ……。結局、あの日から何も変わっちゃいないじゃないか。)
 自己嫌悪に苛まれ、眠れなかった。
 「とにかく、姉さんには悪いが……。」
 身一つで新天地へ旅立ち、努力を重ねて実績を買われたからこそ、店を任される立場になれたのだ。だから、亜紀の中では俺との事など、既に精算された過去でしかなく、同居を頼むのにも躊躇いはなかったのだろう。
 「それなのに、こんな俺と出会ったら……。」

 元の木阿弥になりかねない──。塒(ねぐら)が必要なら、俺が実家に戻ったって構わない。再会にはまだ早過ぎる。いま会えば、また、おかしくなるに決まってる。
 「いや……。そうじゃない。」
 就職で家を出る時、そして結婚、離婚と、亜紀が人生の節目を迎え、二人が“本来の関係”になる機会を得る度に、俺はそうなる事を拒否し、亜紀を抱く事で繋がりを維持し続けた。
 初めての時はともかく、それ以降は俺が欲したからこそ、繋がりは続いたのだ。

 ──私達、何で姉弟なんだろうね。

 去り際に告げられた言葉で、亜紀の胸の内を知った。が、その一方で、彼女が行為そのものを“忌まわしいもの”だと捉えているのは、最初に及んだ日から高校卒業までの数年、拒み続けられてきた事からも判る。
 (あの言葉に、亜紀の思いが集約されていた訳か。)
 だからこそ、断腸の思いで新天地を求めたんだ。

 思えば、病気勝ちだった幼少の頃、両親は俺の体調に気を配るばかりで、ちょっとした事でも大袈裟に扱われたものだ。そのせいか、「この家は、自分を中心に回っている。」等と、馬鹿な妄想に走った時分があった。
 そんな時期に割りを食わされたのが亜紀で、甘えたい盛りに両親を弟に独占され、それだけに止まらず、弟の精神的支柱となるようにと、両親に命じられていた。
 それでなくとも、弟の存在が疎ましく思える時期だろう。なのに亜紀は、学校の友人達を日替わりで家に招いたりと、いつも献身的に接してくれた。
 (あの事で、どれだけ助けられたか。)
 結局、俺は亜紀に依存する事で少しずつ心身の健康を得るに至ったのだが、その時に芽生えた姉への偏愛は年を重ねる毎に大きくなり、現在も何ら変わっていない。
 「だったら、尚更じゃないか。」
 この“姉への偏愛”をどうにかしないと、俺は、再び、亜紀との忌まわしい関係に溺れてしまうかも知れない。いや、そうなる。
 しかし、それは、お互いにとって不幸な話だ。
 「──俺が結婚しちまうのが一番なんだろうが、今は、そんな相手も居ないし……。」
 そう考えていると、ふと、頭の中に、昨日見た飯山莉穂の艶(あで)やかな顔が像を成した。
 「バカな!」
 次の瞬間、俺は思わず声を挙げ、自らの思考を断ち切った。
 「彼女は家庭持ちじゃないか!恥を知れっ。」
 美しい豹変ぶりもそうだが、同窓と気付かなかった主因は長岡という名字が第一で、その理由は考えるまでもない。そんな既婚者を自分の伴侶にと考えてしまう俺は、何処まで自己中心的な人間なんだ。


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