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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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酸っぱいイチゴ (2)-2

「ゆきちゃん、ずっと前から好きだった。俺と、付き合ってください」

意外にもすらすら言えてしまった自分に驚く。
さきほどの茶番で肩の力が抜けたのかもしれない。
彼女は――。
目を丸くしたまま固まっている。瞳に映るライトが揺れている。
次の返事が3秒後だったのか30秒後だったのかよく覚えていない。

「…………はい」

小さくてか細い、かすれた声。でもはっきり聞こえた。
彼女の目が充血している。目の周りまで心なしか赤い。
「ありがとう、ゆきちゃん」
「こちらこそ……ありがとう。なんか……びっくりしちゃった」
「俺こういうの下手でさ……突然びっくりさせちゃってごめん」
「そんなことないよ……すごい嬉しかった」
嬉しいという言葉を聞いて私も嬉しくなる。
もういちど強く手を握ってしっかり彼女を見つめる。
「俺ゆきちゃんのこと……ぜったい大切にするからね」
「なにそれ、格好いいじゃん」
ようやく彼女の顔に笑顔が戻った。

コーヒーのおかわりが運ばれてくる。
カップルシートにぴったり密着して座る私たち。
幸せと安堵と優しい気持ちが混じり合ったふんわりした時間。
「ふぅーこれで今日は失敗デートなんて言わせないぞ」
「でもベロンしたいとか言い出したときはどうなるかと思ったんですけど……」
「あーそれ俺も思った。どうしようこれ、やべーなって」
「無責任男ーぶー」
彼女が甘えるように私にもたれかかってくる。
なるほど、ゆきちゃんはこういう風に甘えてくる女の子なんだ。なんて可愛いんだ。
はじめてこの身に感じる彼女の体重が心地よい。手を握ると彼女も握り返してきた。
「でも言うことはちゃんと言ったぞ」
「ふふふ、そうだよね。格好良かったよ」
「あ、ありがとう……照れるな」
「それに……いつものデートだって別に失敗なんて思ったことないよ」
「そうなの?」
「うん」
「あんな格好悪いのに?」
「うん。だってデートするたびに私、Oくんのこと好きになっちゃったし」

なんということだ。感動しすぎて言葉が出てこない。
なにか気の利いた返事をしないと。
「どうしたの?感動しすぎて言葉が出てこない?」
私にもたれかかったまま、くりっとした茶色の瞳で下から覗き込んでくる。
なぜわかるのだ。全部お見通しなのか?
「そして大好きなゆきちゃんに全部お見通しされて嬉しいって顔に書いてあるー」
「ち、ちがうよ、悔しいって書いてあるはず」
「『全部お見通し』は否定しないんだね」
「なにその詰将棋みたいな誘導は」
「正解?」
「全部正解だよ。悔しいってのも嘘。嬉しいであってるよ」
「やったー」
繋いだ手の指と指を絡めるようにすると彼女も同じようにしてくれた。
お互い自分の指先で相手の指先やら手のひらを愛撫しあう。
つい10分前まで手を握ったことすらないゆきちゃんとこんなことをしてるなんて不思議な気分。

コーヒーはすっかり冷めてしまった。
手を繋いだまま肩そして頭を寄せ合う私と彼女。無言なのに満ちたりた時間。
私の頬の横にある彼女の髪の毛からなんとも言えない甘い香りが漂ってくる。
「ごめん、俺すごい手汗かいちゃってるね」
「私の汗かも。ごめん」
「俺のだよ」
「私のだよ」
二人とも手をほどくそぶりもない。
どんなに絡めても絡まり方が足りない、もっと絡まってほどけなくなればいいのに。
「もっと絡まりたい」
「私も同じこと考えてた」
見つめ合って笑う。
いつの間にかソファにもたれかかりながら向き合う形になっていた。
顔が近い。息遣いを感じる。
「こんなに絡めてるのになんでもっと絡めたいんだろう」
「私、その答え知ってるよ」
「ほんと?教えて」
「二人が愛し合ってるからだよ――」

次の瞬間、私は彼女にキスしていた――。

ぷにっとした柔らかいものに私の唇が触れている。2秒、3秒……。
唇を離して見つめ合う。
もう一度キス。
「ん……」
カフェのガヤガヤガチャガチャした喧騒が心地よい。
「ゆきちゃん……やばい、俺ゆきちゃんのこと好きすぎる……」
さらにもう一度唇を重ねる――。
「私のほうが……Oくんのこと大好きだもん……」
すぐ後ろをスタッフや他の客が往来する気配を感じながら二人だけの世界に没頭する。

「あれ?」
「どうしたの?」
「まだ生クリームがくっついてる」
「もう……処理係でしょ?ちゃんと仕事して」
「ごめん……こうかな?」
チュッ、チュッと互いの唇をついばむようにいろいろな角度でキスしあう。
生クリームなんてとっくにとれていることは二人ともわかっている。
目を開けて見つめ合ってただ何度も唇を重ねる。
「とれた?」
「いやまだ」
「じゃあもういっかいして」
長いキス。少し口を開き少し顔に角度をつけた少しだけ深いキス。
唇をパクパクはむはむ動かして彼女の唇を弄ぶと、彼女も笑いながら私の唇を甘噛みしてきた。
「なかなかとれない」
「いいよ、何度でもやり直そ」
「処理するの下手でごめん」
「ううん、このままずっととれないで欲しい……」
そうやって私たちは夜のカフェでいつまでもキスし続けた。


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