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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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酸っぱいイチゴ-1

「あーん」
「……」
「ほら、あーん」
「……はい、あーん」
「……パク……」
「召し上がれー」
「……もぐ……もぐ……ん……!?」
「どう?」

職場のアイドル「ゆきちゃん」がニコニコの笑顔でこちらを見つめている。
ジャケットを脱いで、上はダークグレーのタートルニットにシルバーのネックレス。
リブ編みのおかげでつんと突き出た胸から腰のくびれにかけての曲線がよくわかる。
曲線は下半身の膨らみへと滑らかに続き、暖かそうな尻がネイビーのタイトスカートにくるまれている。
膝上丈のスカートは椅子に座っているせいか実際より短く見え、黒のストッキングに包まれた太ももについ視線がいってしまう。

人もまばらな残業中のオフィス。
社会人1年目とは思えないほど「大人女子のファッション」が板についているゆきちゃん。
入社時一目惚れした彼女とは、この秋同じチームに配属されたこともあり雑談を交わす程度には仲良くなれた。
自慢ではないが、ショートケーキを頬張る彼女に、冗談で「あーん」できるくらいには打ち解けているのである。
しかしまさか彼女が本当に「あーん」してくれるとは思わなかった。
予想外の展開に私は今幸せの絶頂で、つまりなんだって美味しいに決まっている。

「……お、おいしいよ……もぐもぐ……」
「ほんと?」
くりっとした茶色の瞳を、ぷくっと膨らんだ涙袋が支えている。
「……う、うん……ごっくん、ふぅーうまかった!」
「Oくん、なんか無理してない……?」
ぱちくりと音が聞こえてきそうな瞬きをするのは、大きな瞳のせいか、長いまつげのせいか、くっきり二重まぶたのせいか。
写真でいつも目が半開きになるのが悩みと言っていたが、なるほどまぶたの往復時間が人の倍はありそうである。
なんだかお洒落なカールのかかった髪を下の方で束ねたポニーテールも、彼女によく似合っている。
上品で清楚なパーフェクト美人。
いつまでも見つめていたいがそれも変だし、かといって視線を外しすぎても挙動不審と思われる。
好きな女性の前では自然なふるまいが難しい。

「やっぱり無理してますって顔してるー。ふふふ」
笑顔になると意外にも幼い表情が顔を出す。
目尻にキュッと皺が寄りシルバーのピアスがきらりと光る。
きめ細かな白い頬にはほんのり赤みが差している。
大げさではなく笑うだけで甘い香りが漂ってきそう。
「む、無理なんてしてないよ。あ、甘くて美味しかったよ」
実は甘みのかけらも感じられない酸っぱいイチゴだったのだが、せっかく彼女が「あーん」してくれたその気持ちを大切にしたい。
そう思っているのだが彼女の反応を見るとどうもからかわれているような気もしてきた――。

「ほんと?ショートケーキのイチゴが甘くて美味しいなんて聞いたことないけど」
やっぱり。意地悪そうな笑みを浮かべている。
「……そ、そうなの!?」
「ふふふ」
「ひょっとして……知ってて食べさせた?」
「美味しくなかったんだ」
わくわくした様子の彼女に、こくりと頷く私。
「大成功ー」
サーモンピンクのふっくらした唇の端に、生クリームがちょこんと付着している。いい歳をした大人が、計算ずくかと思うほど可愛さしか感じない。

「ったく、なーにが『大成功ー』だよ。もう酸っぱいし固いし美味しくなかったよ」
「でしょ?でしょ?」
嬉しそうで腹が立つ。可愛い。それにやっぱりいい匂いがする。
「おかしいと思ったんだよな。ケーキのイチゴなんて一番いいところじゃん?それをくれるなんて」
「あー、それショートケーキ初心者」
「初心者だよ!つかケーキ自体久しぶりに食べたし。まあケーキというかイチゴだけだけど」
「ショートケーキのイチゴが美味しくないのは常識だよ。あってもなくてもどっちでもいいって言われてるの」
「なんだよそのミニ情報。喜んで損したー」
「捨てちゃうのもったいないしどうしようかなって思ってたところだったの」
「そこへ間抜けな同僚が自分から『あーん』てやって来たわけだ」
「グッドタイミングだったよ。助かっちゃったからまた来てね」
うんうん、ゆきちゃんと会話できるならいつでも来るよ!と言う本音は、まだまばらに人の残るオフィスにつき自重する。
「くっそー、人を残飯処理係みたいに……その口の端っこにくっついてるクリームも処理すっぞこのやろー」
舌をべろんと出して襲いかかるフリをする。
「きゃー」身体をねじって避けながら指先で唇をぬぐうゆきちゃん。残念ながらぬぐっている場所が反対側だ。
「とれた?」ちらりとこちらを向いて聞いてきたが、まったくとれていない。
「うん、とれたとれた」思わず吹き出すと、ゆきちゃんも吹き出して二人で一緒に笑った。
こんな残業なら毎日でもしていたい。


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