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満里子
【フェチ/マニア 官能小説】

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満里子-8

 満里子は優輝の浮気を警戒した訳ではないと思う。いや、それもあるかも知れないがやはり妻のもとに帰ることを牽制する手段としてこんなことを考えたのだろう。優輝の仕事は時間が割合自由になるので、仕事中に自宅に帰ることが出来る。いけないと言っても何か用があればそうするし、仕事の後だってちょっと帰るということは出来る。サラリーマンのように時間の決まった仕事ではないから仕事で遅くなったという言い訳がいくらでも出来る。
 そんな時に自分の下着を穿かせておけばたとえ自宅に帰っても妻の前で裸になる訳にはいかないと考えたに違いない。しかし、そういうことなら優輝は満里子と関係を深めてからは殆ど妻の前で裸になったことなど無かった。なぜなら満里子が殊更沢山のキスマークを付けたからである。優輝は良く言えば優しいし、悪く言えば優柔不断だから、妻に強く言われれば従ってしまいそうに見えたのかも知れないが、いいようにキスマークなど付けさせていたのは腹を決めていたからなのである。
 しかしそれも満里子には逆に思われていたらしい。困るのに唯々諾々とキスマークを付けさせている、何でも断りきれない人なのだと。妻は、優輝が無断外泊しても何しても咎めたり詰問したりしない。何事も無かったかのように平然と普段通りの態度を通している。自分が選んで結婚した人である以上何があっても自分の選択した結果なのだという強い考え方なのである。
 しかしそういう妻の外見的反応だけしか聞かせていない満里子には、妻のそんな態度が理解出来なくて恐ろしい気がしたのだろう。自信があるのか、それともプライドが高すぎるのかあれこれ考えたに違いない。そして、それだっていつまでそんな調子が続くかは分からない、泣き崩れて考え直してくれと言い出すことだって大いにあり得ると心配したのだろう。あるいは高飛車にそんなことはやめなさいと命令することも考えただろう。そんなことがあれば優輝はそれを振り切って満里子の所に帰ってくるなんて出来ないと思ったのだろうが、実を言えば優輝自身も、妻にそんなことをされたら自分はどうするのか自信が無かった。腹を決めていたつもりだったが、要するに成り行きにまかせていただけなのかも知れない。とすれば満里子の心配は当たっていた訳である。
 女性用の下着を穿いているのを見れば泣き崩れた妻もあっと驚くに違いないし、高飛車に命令したものならカッとなって出ていけとでも言いそうだと考えたのだろう。それが証拠に毎朝これを穿きなさいと満里子が出してよこす下着は、やたらに派手なことは勿論だが、洗い晒しの古くなった物ばかりである。そういう物は洗濯してあっても股の部分にシミの跡があるし、レースがほつれていたりする。綺麗な女性用の下着よりそういう女の臭いを生々しく感じさせる物が効果的だと自分なりの感覚で考えたのだろう。かくして優輝は満里子の下着を毎日穿くようになった。しかし女性用の下着というのは当たり前のことだが男には穿きにくい。体に合った大きさの物を穿けば膨らみを計算していない作りだから性器が押しつぶされて痛いし、大きめの物を穿けば中で性器がぶらぶらする。そんな不満を言っても満里子は一向にひるまない。

 「きついのは我慢しなさい。お洒落というのはそういうもんなの。暑い、寒い、窮屈、面倒なんて言ってたらお洒落は出来ないのよ。ぶらぶらして厭なら上にガードルを穿けばいいの」
 と言う。ガードルなんか穿いたらトイレが困る。小便するのにもいちいち個室に入らなくてはならない。だから優輝はきつくても小さい下着で我慢するようになった。
 優輝の家では昔女中がいて優輝の世話一切を母親に代わってしていたのだが「男の子のオチンチンがブリーフの中でブラブラしているのはみっともなくて厭らしいのよ」と言って、小さくてぴったりしたブリーフばかり穿かせた。だからそれが優輝の好みになっていた。優輝は生まれてから一度もトランクス型のパンツを穿いたことが無いのである。三つ子の魂何とやらで、優輝はその結果、下着の中で性器がぶらぶらするのが我慢出来ない。


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