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満里子
【フェチ/マニア 官能小説】

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満里子-31

 「だからベストを着ればいいのよ」
 「この糞暑いのにベストなんか着れるかよ」
 「それなら着なくてもいいのよ」
 「馬鹿な」
 「透けて見えてもおかしくはないわ。ランニングシャツみたいに見えるから」
 「見えない。それはどう見たって女の下着にしか見えない」
 「何でよ。ランニングと同じじゃない」
 「同じじゃないだろ。そんな肩紐みたいに細くなってるランニングなんてあるか」
 「別にカップなんて付いてないのよ」
 「付いてなくても全体の形が女の下着だ」
 「とにかくちょっと着てごらん」
 「厭だ」
 「さっき下着は何でも着るからって言ったんでしょ?」
 「だからそれはパンツのことさ」
 「いいから、着てみなさい」
 「厭だ」
 「うちの中で着るくらいいいじゃないの」
 「外に着ていけって言うんじゃないか」
 「だから着てみてあんまりおかしかったらやめるから」
 「おかしいに決まってる」
 「だからちょっと着て見せて」
 それは白いネットで出来た女性用のワンピースの水着のような物だった。下着だから股の所はホックというのか何と言うのか、そんな物で止めるようになっている。非常に良く伸びるネットで、着ていない時には小さなパンツよりもっと小さく見える。これが着ると驚くほど伸びて上半身全体を包んでしまう。
 「ほら、いいじゃない。素敵だわ」
 「あのね。何処が素敵なんだよ」
 「何処がっていうことはない。全体の感じよ」
 「真面目に言ってるの?」
 「真面目よ」
 「何のためにこんな物着せるの? 浮気防止?」
 「似合うから着せてるだけ」
 「何処が似合ってるんだよ」
 「だから全体が」
 「馬鹿な」
 「それで下はこれ」
 「それはストッキングじゃないか」
 「そうよ」
 「ストッキングなんか穿けるか」
 「何で? ストッキングも下着よ」
 「あのねえ」
 「ほら、脚を上げて」
 それはやはりネットのストッキングだが、今着た物が白いネットであるのに対して、黒いネットのストッキングであった。太股の所に幅広のゴムが入っていてずり落ちないようになっている。それはいいが、幅広のゴムの所に毒々しい真っ赤なレースのヒラヒラが付いている。この時穿いていた下着が鮮やかな黄色の物だったから、優輝の体は白・黄・赤・黒と絵の具のパレットのようになってしまった。優輝の頭の中はクェスチョン・マークでいっぱいになってしまった。満里子の意図が分からなかったのである。
 「それでほら、これをするの」
 「それは?」
 「サッシュ・ベルト」
 「あのね」
 「分かってる。これは今だけ。外に行く時はしないから」
 それは蛍光色のような緑色の光る生地の幅広のベルトだった。非常に長いベルトで、それをクルクルと優輝の体に2回転させて右の脇腹で大きな蝶結びにした。蝶結びの先端は膝の下まで届いており、鏡で見なくともまるでバレリーナみたいな格好になったことが分かる。ゲイ・バーには行ったことがないが、多分そんな所に行けばこんな格好でショーをやっているのだろう。
 満里子は冗談や嫌がらせでこんな格好をさせているのではなかった。うっとりと満足そうに眺めている顔を見れば分かる。分からないのは、何故こんな格好をさせるのだろうかということである。


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