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満里子
【フェチ/マニア 官能小説】

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満里子-2

 装飾品も派手な物を沢山付けるのが好きで、ハンカチから下着に至るまで身につける物は全部彼女にとってお洒落という趣味の対象である。付き合う男も彼女にとっては身につける服と同じことで、自分の気に入った洒落た服装・態度・言葉遣いをしていないと気が済まない。優輝の態度と言葉遣いは満里子の気に入ったようだが、服装に関しては大いに不満なようで、そのうち徐々に私のセンスで染め上げて行くなどと言う。
 優輝はそんなことを言われてヤニ下がって喜んでいる訳ではない。女の外見にはうるさい方だから満里子のような女に惚れたのだが、自分のお洒落には全く感心が無い男なのである。幼い時に父親が死に、母親は家業に忙しかったから女中に育てられた。女中はそれが仕事だから1から10まで優輝の世話をした。そういうことに慣れているから、満里子が『あれを着なさい、これを着なさい』とうるさく言っても当たり前のように素直に応じてしまう。満里子はネクタイの締め方一つにしても自分の好みを持っていて、優輝の後ろに廻り、ネクタイを締めてやる。一体何処でそんなことを覚えたのだろうか。
 優輝が満里子と知り合ったのは満里子の友人のミイに引き合わされたのである。ミイは池袋のクラブのホステスで、以前は銀座のクラブにいた。胸が大きい他は何処といって特徴のないミイだが、優輝は胸の大きな女性が好みで、ミイが店を移る度にミイを追いかけて新しい店に通った。とは言ってもそれほどミイに夢中にだった訳ではないし、客とホステスの関係以上の深い仲になっていた訳でもない。1つの店だけでなくいろいろな店に行ってみたいが全く何の伝も無い店に飛び込みで入るのは怖いから、移り気であちこち店を変わるミイの存在が優輝にとって便利だったというに過ぎない。しかし付き合いは長かったから優輝はミイと外で会っても平気で体を触ったりするような仲になっていた。
 ミイが満里子とステーキ・ハウスでランチ定職を食べていた時にたまたま其処へ食事しに来た優輝と出会ったのが満里子との初対面だった。優輝の勤める事務所は東池袋にあり、ミイも満里子もその近くに住んでいたから、そういうことがあっても大変な偶然だという程でもなかった。勿論ミイは連れの満里子を優輝に紹介してくれた。今は無職でブラブラしているのだということだった。優輝は女性の服装に関心が強く、セクシーな服装に惹かれる方だからジーパンにTシャツという格好でいた満里子には、その時全く関心を抱くことが無かった。顔も、薄いピンクの太縁のサングラスをしており、形のいい鼻だということは分かったが、顔全体が美人なのかブスなのか良く分からなかった。
 そんな訳で、満里子を無視してミニスカートにサマーセーターという格好のミイとだけ話していた。ミイはいつもノーブラなのを知っているのでどうしても其処に目が行ってしまう。するとその視線に気づいたミイは優輝の手を取って自分の胸をつかませた。優輝は満里子がいるというのに吊られるように胸を掴んでしまった照れ隠しに「ああ、今日もノーブラだね」と何でもないことのように言ったりした。後に満里子と親しくなった時に、そのことを何度もしつこく非難されたのは言うまでもない。
 2度目に満里子と会ったのはミイが勤めていた店であった。「満里ちゃんも働いているからおいでよ」と言われても、満里子の顔を思い出すことは出来なかった。しかし付き合いだからミイと満里子の二人を指名すると、客が来ていたミイはちょっと顔を見せただけで行ってしまい、それから悠然と女王のように歩いて優輝の席に来たのが満里子だった。初めての時は関心を呼び起こされなくてろくに顔も見ていなかった満里子だったが、メーキャップとドレスアップした満里子は化けていた。いや、初めから美人だったのにジーパンとTシャツ、太縁のサングラスという恰好に幻惑されて気が付かなかっただけなのだ。白いドレスを着てファッション・モデルのように優雅にゆったりと歩いている満里子は光に包まれているように美しかった。
 ああ、あんな女を指名したいなと思っているとその女性が自分の隣に座ったのに驚いた。それが真理子だとは思いもしなかったのである。話をしてみるとミイとはかなり長い付き合いだという。ミイとは優輝も長い付き合いだったが、双方話にも聞いたことがなかった。ホステスなどというと自分の客についてあれこれ友達に喋るものだと思っていたが、意外にもミイはそうした方面は秘密主義なのだと満里子は言う。
 優輝はこの時の満里子の美しさに圧倒されて、以来、ミイの店に飲みに行く時は必ず満里子も指名した。本当の目当ては勿論満里子だったが、礼儀としてミイも一緒に指名することは欠かさなかった。しかしその後次第に優輝は満里子との仲を深めてミイから乗り換えたような感じになっていくのはどうしようもないことであった。満里子はミイに直接「優輝に恋をしている」と言ったのだという。それは正直のようでいて狡い作戦だった。正面切ってそう言われれば、私のお客だから駄目だとは言えない。客を取った取られたはホステス同士での争いの種だが、客としてではなく個人として好きになってしまったのだと言われれば、正面切って反対することなど出来ない。「好きならアタックすればいいじゃない」とミイは言ったそうだが、それはミイの本心ではなかっただろう。その証拠に、後に優輝は店の中でミイにボロボロと泣かれたことがある。


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