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満里子
【フェチ/マニア 官能小説】

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満里子-10

 「何で? 本当はやって欲しくなかったの?」
 「いいや、ああいうことはいつもやって欲しいと思うよ」
 「奥さんもいつもやってくれたの?」
 「まさか」
 「まさかって?」
 「彼女はセックスは秘め事だって言うんだ」
 「秘め事って?」
 「つまり夜暗くなってから静かにそっとやるもんだっていう意味かな」
 「昼間はやらないの?」
 「やらない」
 「声を出さないの?」
 「ほんの微かに鼻から声を漏らすことがあるくらい」
 「あんまり感じない人なのね」
 「そうじゃない。感じてはいるんだけど、セックスで乱れるっていうことが彼女の美意識に反するんだよ」
 「そうなの?」
 「ああ」
 「セックスで乱れると醜いかしら?」
 「いや、僕は反対だと思う」
 「反対って?」
 「セックスで乱れるのは美しい」
 「本当?」
 「ああ。セックスっていうのは熟れて爛れてとろけそうな程美しいもんだと思う」
 「私の言ったこと真似して」
 「いや、本当にそう思うのさ。女房みたいに取り澄ました女は僕は嫌いじゃないんだ。だけど、その取り澄ました女がセックスの時は狂乱状態になって乱れまくるっていうんでないとつまらない」
 「それじゃ私ももっと乱れまくらないと駄目?」
 「満里子は乱れまくってるじゃないか」
 「あれくらいで満足?」
 「ああ。あれ以上乱れまくると猿ぐつわしないといけない」
 「何で? 私の声ってそんなに大きい?」
 「大きいな。でもそれが好きなんだけど」
 「優ちゃんは声を出さないね」
 「男は声なんか出さない」
 「出す人だっているよ」
 「前の男は声を出したのか」
 「そんなの忘れた」
 「そうかな?」
 「前の男のことなんか何もかも全部忘れたわ」
 「まあいいさ。忘れても覚えていても」
 「妬いてるの?」
 「まさか」
 「ねえ。私にも取り澄まして欲しいの?」
 「何が?」
 「ああいう取り澄ました女は嫌いじゃないんだって言ったじゃない」
 「ああ、それはつまりセックスの時との落差を感じられるから悪くないという意味さ。セックスの時まで取りすましていたら何も意味がない。それに第一僕は、本当は満里子みたいにいつもセクシーであって欲しい。寝てる時も起きてる時もセクシーで、セックスの塊が服着て歩いているみたいな、そんな女が一番好きなんだ」
 「本当?」
 「本当。処女と少女と娼婦と淑女っていう歌があるだろう? 男はそんな風に女の多面性を好むのが普通なんだけど、僕は違う。娼婦と娼婦と娼婦と娼婦っていう感じの女が好きだ。だから満里子に惚れた」
 「私ってそんなに娼婦みたいなの?」
 「娼婦みたいに誰とでも寝るという意味ではないよ。娼婦みたいに男を引きつける女だという意味さ。男の性感にドギューンと刺激を与える」
 「それでドぎついメーキャップが好きなのね」
 「そうだけど、それは満里子の好みでもあるじゃないか」
 「でも優ちゃんと付き合うようになってますますドぎついメーキャップになっちゃった」
 「いいことだ」
 「透けてる服着たり、服装もどんどん派手になっていく」
 「それもいいことだ。でもこの間のはちょっとやり過ぎなんじゃないのかな」
 「この間のって?」
 「だから先週新宿に着て行った白い服」
 「何がやり過ぎだった?」
 「下着がまるきり透けていた」
 「嘘」
 「嘘じゃないさ。下着が透けて見えるよって言ったじゃないか」


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