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亜美
【SM 官能小説】

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亜美-43

 翌日は、既に単独行動が原則になっていた誠司が、礼子と1日共同取材をする予定になっていた。それは半ば礼子が押し付けるように決めた予定だった。ドイツから来たSMの女王が日本人のM男を相手にプレイするのを取材するというもので、少し英語の出来る誠司を礼子が強引に狩り出したのである。ドイツ人だが彼女はインターネットを通じて活躍しているくらいだから、相当英語も出来るらしい。通訳するほど上手くないですよと尻込みする誠司を、礼子は、先輩の特権をかさに有無を言わせず、同行を命じていた。
 ヒルダという彼女のために2人のM男が用意されていた。場所はホテルではなく、ある人の個人邸宅だそうだが、広いプレイルームだった。ヒルダは相当な美人だが、何しろ体が大きくて、それだけで圧倒されてしまう。プレイ中はもっぱらドイツ語で命令を下し、S女としての威圧感は十分だった。
プレイの内容としては単調で、裸になった二人の男を鞭で打つだけだった。しかし鞭うつ場所や強弱の付け方、二人に対する鞭打ちの配分などすべてが計算されつくしたような巧緻が感じられて見事としか言いようがない。ドイツ語で厳しく叱りつけたり、優しく囁くように耳のそばで語りかけたり、言葉の意味など通じなくてもMの男たちを自在に操るには十分なものだった。時には男の紙をつかんで顔を上げさせ、その口の中に指を差し込んだりもした。しかしそれ以外にはほとんど男の体に触れるということは無かった。にもかかわらず裸の男は二人ともほとんど同時に鞭打たれながら射精した。その種の趣味がない誠司には鞭で打たれる性的感覚というのは分からないことだったが、プレイが終わったときにはまるで自分が鞭打たれたかのようにぐったりしていた。男たちの射精は驚くほど長く続いていたが、ぼんやりとそれを見ていた誠司も射精してしまった。エッと驚いて自分の股間を見ると、あろうことか礼子が誠司の性器をいつの間にかズボンから取り出して口に含んでいるのだった。誠司は礼子の口に中に射精していたのである。
礼子については編集室の何人かから同じ忠告をされていた。仕事に野心を持っているくせに結婚願望が妙に強いから気を付けろというのである。気を付けろというのはどういう意味ですかと聞くと「分からないのか?あんなに支配欲の強い人間は男にも少ないぜ。あんなのと結婚すれば文字通りの奴隷にされてしまうさ」ということだった。言われてみればそんな感じかもしれないと思ったが、この僕と結婚したがってる?いや、僕を奴隷にしたがっている?それであんなことをした?誠司は考えれば考えるほどわからなくなってしまう。だから分からないことは考えないことにしようと自分なりにけりをつけたのであった。
 
亜美と誠司は凄い水着を着て海に行こうという約束をしていたが、海に行くような季節はまだ遠いので、単に亜美のマンションで抱き合うだけのようなデートがそれから何度も続いた。しかし、誠司はそれで十分すぎるほど満足していた。いよいよ季節も到来したし、水着を用意したのよと亜美が言ったのは、梅雨が明けたころだった。

 「どう?」
 「凄いですね」
 「気に入ってくれた?」
 「ええ気に入りました」
 「これはね、特注品なのよ」
 「ほう」
 「何故かというと、こういうのは売ってなかったから」
 「そうですか? インターネットなんか見ていると結構ありますよ」
 「それは水着のことでしょ?」
 「え? 何のことですか?」
 「今脱いで見せてあげるわね」
 「あっ」
 「ね?」
 「そのバイブが特注なんですか?」
 「そう。ただバイブのお尻に紐を通すリングをつけてもらっただけなんだけど」
 「それは何処にスイッチが付いてるんですか? それとも動かないんですか?」
 「ちゃんと動くわ。スイッチはこれ」
 「え? ワイヤレスですか?」
 「そうよ」
 「驚いたな」
 「着てしまえば、ただの紐の水着に見えるでしょう?」
 「そうですね。股のところの布がほとんど絆創膏くらいの幅しかありませんからね」


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