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亜美
【SM 官能小説】

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亜美-29

 「私のことちょっと好きだなと思っているの?」
 「だから同僚として好意を持っているという意味です。そういう意味ではちょっとではありませんよ。とても好意を持っています。ついでに言えば言われなくても知ってるでしょうけど、赤尾さんは1人の女性として、別に裸にならなくてもなかなか魅力のある人だと思います。裸になると見劣りするという意味ではありませんよ」
 「そう。有り難う。会社の連中で私をプレイに誘おうとしなかった人は今までいなかったんで、何でかなと思ってしつこく聞いてみたの。ご免なさいね」
 「いえ。それで同僚とプレイしたんですか?」
 「する訳無いでしょ。私はM女じゃないのよ」
 「すると仕事の為に我慢している訳ですか」
 「まあ必ずしもそうでもないんだけど」
 「どういう意味ですか?」
 「あのね。中田君だって昨日いやいや渋々プレイに参加する羽目になったけど、結局は感じてたでしょ?」
 「ええ。それは勿論感じました」
 「それと同じよ。浣腸されて排泄する所なんか私だって人に見られたくは無いの。だけどこれも仕事のうちと割り切ってしまえば、プレイ自体は感じるのよ。どんな女だって感じると思うわよ。私だって初めはSMなんて嫌悪してたんだけど偏見がなくなってみれば、浣腸だってムチ打ちだってそれなりに性的な快感というのはやっぱりあるのよ」
 「はあ、そうでしょうね。SMなんて僕も嫌悪してたけど、何度も見てると確かにあれは誰でも感じるだろうなって分かります。それにそうでなければうちの雑誌が採算取れる程売れる筈が無いですしね」
 「そうよ。あのね、中田君が言ってくれたから私も言う訳じゃないけど、中田君はとても感じのいい人で私も好意を持っているわ、同僚として」
 「有り難うございます」
 「それに言われなくても知っているでしょうけど、男としてなかなか魅力もあるわよ。服を着ている時も裸になった時も」
 「いや、それは言われるまで知りませんでした」
 「本当?」
 「ええ。そんなこと言われたことも無いし、自分の顔や体は鏡で見て知ってますから」
 「外見じゃないわ。人柄が素直で柔軟で好感が持てると言ってるの」
 「そうですか。有り難うございます」
 「さて、帰ったら昨日の取材を記事にまとめるから中田君は写真の方お願いね」
 「はい」
 「もう大体要領は分かったと思うから、これなんかいいんじゃないかなと思う写真を20〜30枚選んでおいてくれる? そしたら私がその中から選ぶから」
 「はい」
 「私の写真は持って帰ったりしては駄目よ」
 「そんなことはしません」
 「でも性器の写っていない写真ならいいわ」
 「は?」
 「中田君が私の写真を密かに持っているなんて悪い感じはしないと言ったのよ」

 からかわれているのだと思ったから返事はしなかった。中田はこんな感じで蝶書房の編集員として次第に仕事を覚えていき、1ヶ月もするともう完全な戦力として独り立ちした。従って撮影と記事の執筆と両方を1人でやることになった。尤も礼子や水田はカメラで撮影することは出来てもそれをパソコンで処理することが出来ないから、それは石井がやることも偶にあったが、殆どは誠司が引き受けることになった。従ってその分だけ中田自身の取材は量を減らして貰えた。
 他の雑誌の編集部というのはどんな感じなのか知らないが、此処は確かに礼子が言う通りかなり行動の自由がきいた。何処へ何の用で出かけるにしても誰かに相談したり許可を取り付けたりという必要が無く、単に取材とボードに書くだけのことで行き先を知らせる必要さえないのである。私用で数時間費やしたとしても名札を裏返して取材とその下に書いておけばそれで通ってしまう。その代わり取材費というのは滅多に貰えない。時間の使い方について各自の良識に任されているのは雑誌の発行に支障が無い限りそんなことはどうでもいいということのようだ。
 水田などは毎日1番早く出社して来るが、弁当を食べた後は出かけてしまって殆ど会社にいるということが無い。その割には水田の取材で出来た記事というのが殆ど無いのである。だから本当に取材しているのかどうか疑問だが、水田には広告取りの仕事もあるからあながち遊んでばかりという訳でも無いだろう。しかし広告は毎月継続的に同じ業者が広告を依頼してくれるのが殆どで、広告取りの仕事もそんなに忙しい筈はないと思う。継続して広告を出して貰うために接待したり個人的に親しく付き合っておいたり、いろいろあるのだろうか。


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