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君と僕との狂騒曲
【ショタ 官能小説】

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君と僕との狂騒曲-33


 「ボーイスカウト・オブ・ニッポン!」

 朝霧高原に集まった三万人のボーイスカウトが皇族に敬礼した。
 僕は心の中で、ジャパンってのは確かに間違いだけど、日本も人のことは言えないんじゃないかなあ、と、ぼんやり立っている。でも、凄い青空の下に集まったボーイスカウトの数はちょっとしたシュールレアリスム。突然イブ・タンギーみたいな絵を描きたくなった。あの混沌にここは良く似ている。

 このジャンボリーは、仮想的に「ボーイスカウト市」とされていた。それだけの人数だから。そのままどこかで三万人の「ボーイスカウト市」ができたなら、ちょっとしたそこらへんの宗教より圧倒的に凄いんじゃないだろうか。
 でも実際この風景を見ていると、なんだかファシズムみたいに感じるのは僕だけなんだろうか?岡林や高田渡の歌うメッセージを僕は知っている。だから僕はそんなのに同意は出来ない。日本は自分の誇りを不燃ゴミの日にまとめて捨ててしまっている。

 だから、僕は敬礼しなかった。ささやかな意思表示。
               *
 行事が終わると、まただらだらした腐った生活が始まる。もうジャンボリーなんてたくさん。多摩一団はどうやらボーイスカウトから少しばかり逸脱している。大げさだけど、人間の尊厳とか、自立や独立を望むスタンスがある。僕がそうやって考えながら草地に座り込んでいると、君がやってきた。くどいけど、凄い青空。孔雀の羽のようなピーコック・ブルー。そこに立っている君は素晴らしい。君のことだから僕にも隠しているけれど、きっと学校の千人の半分の勇気ある女の子なら、君に告ってるんじゃないかな。

「フランスのスカウトが来ているって。付き合えよ」

「うん」僕は立ち上がって制服のちりを払った。正確には君は僕より二ヶ月ほど早く生まれている。だから言うことを聞くとも。いつでもどこでも。
               *
 恋人同士っての、わからなかったけど、今は良くわかる。

 本当は君の肩に頬を寄せて歩きたい。僕たち愛し合っていますって、世界中の人に宣言したい、そんな誇らしい気分。今歩いているこの砂埃でいっぱいの広い道が、お願いだから終わりませんようにと僕は祈る。だからフランスのスカウトが何をやっていようが興味がない。恋人達にとって、「映画を一緒に見る」みたいな口実だから。通過儀礼のひとつだけ。だけど困った事に、僕たちみたいな愛を許せる国じゃないものね、ニッポン。この、つつましい国。

 実際にフランスのキャンプに行ったときには確かにびっくりしたね。まだ12歳ぐらいの男の子が葉巻を吸っていたから。僕もセブン・スターズ(やだね、教養って)をくわえてたけど、あんなに自信満々にはなれなかった。

 自由って言うのは、幸せな分だけ対価がある。
               *
 夜になって、コンサートが開かれた。別にスーパースターが来る訳じゃない。

 「筑波山麓男声合唱団」が来たのはわかるけど、とにかく何も見えない。朝霧高原でコンサートをやるって事自体無理がある。名古屋のガールスカウトの亜美が言っていたとおり、音楽が聞きたきゃ中津川に行けばいいことであって、べつにジャンボリーに歌を聴きに来た訳じゃない。

 でもまあ、僕の場合、体育座りでステージ方向(多分)を見ている君を見ている方が数段楽しいのだけれど。
               *
 その夜も僕たちは愛し合った。セックスって、やればやるほど良くなるもんだって凄く実感した。昨日より十倍、おとといより百倍良くなって来る。あの陶酔感をなんて言ったらいいんだろう。お互いが溶けてひとつになる感じ?プラズマの炎に焼かれる瞬間は例えようがない。僕は君を、君は僕を愛していた。でもそんな言葉なんていらない。僕は甘ったれだから、夜明けまで君に抱いて欲しくなる。君は君で、君の持っていた道徳とか理性とか君を縛り付けるもの全てが壊されて、自由になる。君も僕も今までの世界がモノクロームではなく、天然色であることを知った。なにしろ「快楽」ってものをお互い初めて知ったのだからね。そしてそれは世界を広くする無限のプラットフォームだ。


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