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樹理
【その他 官能小説】

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樹理-16

 「此処の抽出貴方の専用にするから憶えておいて」
 「其処以外は開けるなっていうことか」
 「そうじゃ無いわよ。別に見たければ何処開けたって構わない」
 「そうか? 樹理の下着は何処に入れてある?」
 「この段よ。どうして?」
 「顔突っ込んで匂いを嗅ぐんだ。かぐわしくて気絶するかもな」
 「香水の匂いで気絶するわよ」
 「香水?」
 「そうよ。香水の空き瓶を入れてあるから」
 「なるほど。そういうことをするのか」
 「常識よ」
 「そうやってマンコ臭を隠すっていう訳だな」
 「何? マンコ臭なんてやめなさい。貴方に似合わない」
 「へい。随分買ったな」
 「靴下なんかいくつあってもいいでしょ。それにブリーフとワイシャツ。これから少しずついろいろ揃えておくから」
 「いいよ。それだけあれば沢山だ」
 「だってネクタイだって買わないといけないでしょ?」
 「ああ、ネクタイなんて安物でいい」
 「安物っていくらくらいの?」
 「1本500円の」
 「厭だ、そんなの」
 「それじゃ1000円」
 「ブランドのネクタイ買って上げるから」
 「別にブランドでなくていい」
 「私の好きな物を買わせて頂戴」
 「それはいいけど、勿体ないから高い物は買うなよ」
 「何言ってるの。ホステスに100グラムのネックレスプレゼントする癖に勿体無いは無いでしょ」
 「プレゼントは高くないと効き目が無いからいいんだ。見事効き目が出ただろう?」
 「別にプレゼントなんか無くたって同じことよ」
 「そうでも無いだろ」
 「馬鹿。プレゼント貰ったからこういう関係になったとでも思ってるの?」
 「思っとりません」
 「1番上のこの小さい抽出も貴方にあげようかな」
 「何入れるんだ」
 「ハンカチとかネクタイ・ピンとか煙草とか小物」
 「そんな物服のポケットに入れておくからいい」
 「駄目。ポケットは何も入れないの」
 「どうして?」
 「服の形が崩れるから。そうだ、忘れない内に鍵を渡しておこう」
 「何の鍵?」
 「この部屋の鍵よ」
 「何で? 樹理がいない時に僕が鍵を使って入るなんてことは無いからいいさ」
 「いいの、持ってなさい。私がいなくたっていいのよ。いつでも連絡しないで此処に来ていいんだから」
 「樹理がいない部屋で僕は何をすればいいんだ?」
 「何でもいいわよ。ベッドで寝てもいいし、下着の抽出に顔突っ込んで気絶しててもいいし」
 「それじゃ気絶する方にしよう」
 「1番下の段だから丁度いいでしょう」
 「前にも気絶趣味の男と付き合ってたのか?」
 「そんな趣味は貴方だけ」
 「そうでも無いさ」
 「この部屋の中の物は何を使ってもいいから」
 「それじゃ預金通帳持ち出して使うかな」
 「いいわよ、そうしたければ」
 「冗談だよ」
 「冗談じゃなくていいわよ。私の物は何でも好きにして」
 「有り難うございます。山口雅也このご恩は一生忘れません」
 「何言ってるの。恩に感じるんなら、此処に引っ越していらっしゃい」
 「その問題は可及的速やかに検討させて頂くことにします」
 「何? カキューテキ速やかにって」
 「つまり忘れた頃にっていう意味だな」
 「そんなこと言ってると私の方から貴方の部屋に引っ越しちゃうから」
 「いやいや、それは困る。誰かと鉢合わせして血の雨が降ったらいけない」


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