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冬恋慕
【SM 官能小説】

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冬恋慕-2

彼には、地位も、名誉もあって、そして綺麗な奥さんもいたはずなのに、ホームレスになって
何もかも失い、あたしの前に裸で跪いている、自らのすべてを脱ぎ捨てて、自分の欲望に戻ろ
うとしているのよ、そんなところは歳にも似ず健気に見えるわね。あたしは乗馬鞭で彼の小さ
なおチンチンをいたぶって、そんなちっぽけで欲望のかけらも見えないおチンチンじゃ、奥様
もかわいそうなこと、あなたのものがいかにつまらないものかって笑って罵ってあげたわ。

でね、あたしがプレイ用の衣装に着替えたのを見て、先生ったらあたしの使用済みの下着が
欲しいなんてしつこくいうから、ショーツとブラジャーを跪いた彼の前に放り投げたわ。彼は
餌を与えられた犬のように床に這いつくばって、あたしの下着を鼻にあてくんくん臭いを嗅い
でいるのよ。どんな匂いがするのって彼に聞いたら、冬色のレモンの匂いだって。よくわから
ない言葉だったけど、彼はとても幸せそうだったわ。

先生ってセックスはできそうもないのに女の下着の嗅ぎ方と脚の舐め方だけはよく知っていた、
それが彼にとっての欲望だなんて思ったわ。ハイヒールに這わせる舌はわりと丁寧だったけど
変な軟体生物のような彼の舌がハイヒールの隅々にねっとりと絡みつくとちょっとキモかった
わね。ミッション系の女子高の先生だったのにこんなに変態性欲が旺盛な先生なんてアブナイ
感じ。



ええ、コウジは亡くなったわ。あたしと別れて半年後の突然の交通事故。あれから、もう十年
になるのね……。初めて彼に会ったときからあたしは感じていたわ、彼とは自然につきあえる
男だって、心もからだも。自然ってとても心地よかったわ。一緒に住んで、一緒に食事をして、
一緒にベッドを共にして、コウジの肌や髪の匂い、唇や爪の色あい、そして彼のしぐさ、その
すべてを受け止めるときに開いていくあたし自身の心と身体の感覚…私は鞭を手にするSの女
でもなければ、彼はMの男でもない関係。それが自然だなんてあたしは彼とつきあって初めて
感じたわ。

SMクラブを辞めて三年後だったかしら、スポーツジムで彼と初めて出会ったのは。そのとき、
すでに舞子は結婚していたと思うけど。彼はあたしと同じ歳で、背が高くて、けっしてハンサ
ムでもなかったけど、何か皮膚を透かして注がれる彼の物憂い視線に胸の奥がとても敏感にな
れる男だったわ。彼はあたしがSMの女だってことにすぐに気がついたわ。なぜ、わかったの
かって聞いたら、カズミは男に《創られること》を欲している目をしているからって。どうい
うことかしらっていうと、あたしが、あたし自身の中に別の女として男に描かれたいことを
快感にしているからだって。それってもしかしたら、ただの欲求不満かも、なんてベッドの中
で笑いながらあたしが彼の裸の背中に爪を立て、脚を強く絡ませ、彼の上に覆いかぶさると、
彼は真面目な顔をしてあたしの耳元に囁くのよ。激しい欲望をもっている女の相手の男はSか、
Mの男でないといけないみたいだ、おそらくSの男はきみに尽くし、Mの男はきみに尽くされ
る、おれはどちらだと思うかいなんて。ほんとうによくわからなかった、彼がSなのか、Mな
のか。わからないからあたしはコウジと《自然》に恋人になれたような気がする。




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