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ジュディー
【その他 官能小説】

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ジュディー-1

 六本木をブラブラしていたジュディーはスカウトされてアダルト・ビデオに出演し、一躍有名になった。日本人は金髪が好きなのである。それに比較的日本人には親しみやすい顔立ちだったことが幸いしたようである。立て続けに3本のビデオに出演し、テレビにもあちこちゲスト出演しているうちに下手な日本語の頓珍漢な受け答えが面白いというので人気を博した。
しかし勿論ジュディーは飽くまでもポルノ女優なのであった。テレビに出演を依頼される場合はいかにもポルノ女優であるという服装が要求されたし、発言も性に関してはタブーの無い女であるというイメージを崩してはならなかった。もともと不良外人と紙一重のような生活をしていたから道徳観は薄いが、定職がなかっただけで不良外人という程の悪では無かった。性に関しては奔放と言えば奔放だが、誰とでも見境無く寝るという程では無かった。
実際にセックスしていると宣伝されたビデオではそのように見えるだけで本番行為はしていない。実際にセックスしてくれという要求はあったが、どうせ放映出来ないのだし、そこまでやるのは厭だと言って頑として拒否したのだった。しかしそれは相手役の男優が気に入らなかっただけのことで、セックスそのものに抵抗感などなかった。
プロダクションとは名ばかりの小さな会社に所属しているのでジュディーは会社のドル箱となり、我が儘がきいた。そこで経理をしていた40歳近い島津清が片言ではあるが英語を喋るので自然ジュディーの世話をすることが多くなった。でもジュディーは時々おかしな日本語を喋るが、聞く方はほとんど完全に理解できる。分からないふりをしている方が便利なことが多いので、分からないような顔をしていることが多いというだけである。ジュディーが稼ぐようになって専属のマネージャーを雇おうということになった時、ジュディーは島津でないと厭だと言って、結局会社はマネージャーを雇い入れる代わりに経理係を雇うことになった。
 もともと経理などという仕事はデスクワークが好きで外歩きなどは嫌いだという人間がなるものである。島津も当然そういう性格であった。しかし会社命令とあれば厭も応も無いのがサラリーマンの宿命である。
 「島津君、畑違いの仕事で苦労するだろうが、何事もやる気と根性だからね」
 「はい」
 「ポルノ女優にとって最も大事なことは何か分かるかね」
 「はあ・・・何でしょうか?」
 「イメージだ。ポルノ女優は性に関する男共の夢なんだから、イメージが1番大切なんだ。言ってみれば何処を取ってもセックス、何を喋ってもセックス、歩く姿もセックス、おならをすればそれまでセックスの匂いがするんだ。そういうイメージを男達はジュデイーに見てるんだよ。分かるかな?」
 「はあ」
 「そこで君はジュディーがそういうイメージに反することをやろうとしたり、言おうとしたりした時にはそれを阻止しなければならない」
 「はあ、分かりました」
「例えばどんなことだ?」
 「は?」
 「はじゃない。ジュデイーが何をしようとした時君は何をすればいいんだか言ってみろ」
 「えー、誰か男と仲良くなったりホテルに行こうとしたりした時は阻止するとか、そういうことですか?」
 「違う、違う。分かっとらんな。男とやりまくるのは一向に構わないんだ。性に奔放だというのはポルノ女優にとってはプラスのイメージだからな。何だったら君もご相伴に預かりたまえ。そういうことではなくてだな、例えば普段外出する時にジーパンを穿いていたり、スッピンで外に出たり、男の夢を壊すようなことをさせてはいかんのだよ」
 「はあ」
 「マリリン・モンローがインタビューで、寝るとき何を着て寝るんですかと聞かれて何と答えたか知っているか?」
 「さあ、ネグリジェですか?」
 「有名な話だが知らんかな。マリリン・モンローはシャネルの5番を着て寝ますと答えたんだ」
 「そういうブランドの寝間着ですか?」
 「違う。シャネル5番も知らんのか。香水のブランドだ」
 「はあ」
 「つまり香水以外は何も身につけないでベッドに入るのよと言ったんだ」
 「なるほど」
 「それじゃ生理の時はどうするんだなんてことはどうでもいいんだ。要するにセックスシンボルはイメージが大切だということだよ」
 「はい」
 「という訳だから、君の仕事はイメージの確保だ。営業みたいな仕事は私がやるから考えないでいい。もともと君には無理なことだし」
 「はい」
 「だから君はジュディーが朝起きる前にはジュディーの部屋に行ってなければならないんだぞ。夜は彼女が眠ったのを見届けてから帰るんだ。帰らないでしっぽりやってくれても構わんけどな、君はジュディーにえらく気に入られているようだし」
 「いえいえ、とんでもない」
 「それはともかく『ジュディーがコンビニで買い物してる所を見たけど普通の外人だったぜ』なんて誰かにツイートされたり写真を撮られてアップされたりしたらアウトなんだ。ジュディーはそんじょそこらのポルノ女優とは違う。歴史に残るようなセックス・シンボルになれる可能性を秘めてるんだ。いわば第2のマリリン・モンローなんだ。私生活も含めて人の眼に触れるジュディーは常に100パーセント、いや120パーセントセックスの塊でなければならん。分かったかな?」
 「はあ、大体」


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