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京子
【青春 恋愛小説】

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京子-7

 「陽介、室井さんって子から電話」
 「室井? 何で室井が電話してくるんだよ」
 「用があるんでしょ」
 「あっちに用があってもこっちに用なんか無い」
 「なあに? 仲が悪いの? いいから出なさい」
 「もしもし」
 「もしもし」
 「お前って意外に可愛い声してんだな」
 「えっ?」
 「えじゃないよ。又車にぶつかったんだって? お前デカイ体してんだから縮こまって歩かないとみんなが迷惑するんだよ」
 「陽介、何ですか。失礼なこと言うんじゃありません」
 「全然。こいつがぶつかると車が壊れてこいつは怪我もしないんだ」
 「もしもし、もしもし」
 「あっ、何の用だ」
 「あのー、村井薫ですけど」
 「ムライカオル? あーっ」
 「お久しぶりですけど憶えていますか?」
 「お、お、おぼ、憶えてます」
 「私の声って可愛いですか?」
 「え、ええ。とっても」
 「それで、意外に可愛いってどういう意味なんですか?」  
 「それは、その・・・凄く可愛いっていう意味です」
 「フフフ。私のこと室井さんと間違っていたんでしょう?」
 「そ、そうなんだ。姉さんの馬鹿が室井さんから電話だなんて言うから」
 「誰が馬鹿なの」
 「お陰で偉い恥かいただろ。室井ってのは女子プロレスで、村井っていうのはミスユニバースなんだ」
 「陽介それみんな電話の向こうに聞こえてるよ」
 「え? あっ、ちょっとあっち行っててくれよ」
 「テレビ見てるんだもん」
 「それじゃ話しかけるなよ」
 「ほら、いつまで待たせてるの?」
 「あっ。もしもし」
 「はい」
 「あのー、待たせて済みません」
 「いいえ。ミスユニバースは木村さんでしょう?」
 「え? あ、あいつは唯の高校生だから」
 「厭だ。私も唯の高校生よ」
 「え、ええ。そうなんだけど」
 「あの、もうすぐ戸山くんの誕生日でしょ?」
 「僕の?」
 「ええ」
 「そうだけど何で知ってるの?」
 「木村さんに聞いたの」
 「何で木村が知ってんだろう」
 「そうね。それでね、良かったら今度の日曜日に会いたいと思って電話したの」
 「うちは誕生日でも何もしないんだ」
 「だから私がささやかなお祝いをして上げようと思って」
 「ささやかなお祝いって?」
 「誕生祝い」
 「どんなこと?」
 「それは秘密」
 「でも困るな。うちは6人も集まったら入る所なんて無いんだ」
 「あら。私だけ」
 「村井さんだけなら何とか入れる」
 「戸山君のうちじゃなくて外の方がいいんじゃないかと思うんだけど」
 「うん。庭なら結構広いけど雨が降ったらどうしよう?」
 「え? あ、戸山君のうちの庭じゃなくて何処か余所の場所でっていうこと」
 「余所の場所って? あっ、何すんだよ、姉さん」
 「もしもし。陽介の姉の聖子と申します。今度の日曜はうちで陽介の誕生パーティをやりますから、是非うちにおいで下さい。誰も来てくれる人がいないんで困っていたところなんです。余所へ行くのは、それから後で行けばいいでしょう?」
 「え? ああ、初めまして。村井薫と言います。でも突然のことでお邪魔では無いでしょうか?」
 「全然。陽介のお友達なら突然だろうが予約していようが、いつでも大歓迎ですから」
 「有り難うございます」


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