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京子
【青春 恋愛小説】

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京子-5

 「陽介、薫のことどう思った?」
 「カオルって?」
 「昨日うちで会ったでしょう? 村井薫だよ」
 「あ、村井さんか」
 「何で村井さんなの」
 「何でって?」
 「私のことは木村って呼び捨てにする癖に、何で薫は村井さんなの」
 「え? 呼び捨てにする程親しく無いから」
 「ああ、そうね。その村井さんが陽介ともっと親しくなりたいらしい」
 「何で?」
 「何でって陽介分かんないの?」
 「俺のこと好きだからかな?」
 「ふん。しっょてんじゃ無いよって言いたいけど、それしか無いじゃない」
 「嬉しいなあ」
 「嬉しい? 陽介そんなに素直に感情を表現しちゃいけないよ。本当に無神経なんだから」
 「どうして?」
 「分からないの?」
 「ニヒルじゃないからか」
 「何それ」
 「ニヒルに、俺は女なんか嫌いだって迷惑そうにした方がいいとか」
 「それじゃホモになっちゃうじゃないの」
 「そうか」
 「可愛いと思った?」
 「村井さん?」
 「うん」
 「うん」
 「京子さんとどっちが可愛い?」
 「京子さんって?」
 「馬鹿。私の名前知らないの?」
 「あっ、そうか」
 「呆れた。呆れて物も言えない」
 「だって『さん』なんか付けるから誰か他の人のことかと思った」
 「薫が陽介ともう1度会う機会作ってって言うから断った」
 「勿体無い」
 「それだけ? 何だか人ごとみたいな言い方」
 「だって断っちゃったんならしょうが無いじゃないか」
 「電話番号教えてくれとか言わないの?」
 「電話番号教えてくれ」
 「陽介は少し自分の頭で考えて物を言いなさい」
 「どうして?」
 「どうしてってロボットじゃ無いんでしょ?」
 「自分の頭で考えて電話番号教えてくれって言ったんじゃないか」
 「私の言ったこと真似しただけじゃない」
 「そんなことない」
 「あの如何にも抜けたみたいに見えた男の子いたでしょう? あれって東京都で1番頭がいいのよ」
 「へえー、何でそんなこと分かる?」
 「だって去年も今年も学力テストで東京都1番の成績取ったんだから」
 「へえー、凄いな。そんな奴っているのか」
 「それは1番だって2番だっているに決まってるでしょ」
 「あ、それはそうだね」
 「もう1人の如何にも秀才そうに見えたのが大体東京都で10番以内って感じなのよ」
 「それで俺を呼んだのか」
 「え? 何で?」
 「だって俺を入れて3人で平均すると標準的になるから」
 「そうなるのは確かかも知れないけど、そのことに何の意味があるの?」
 「さあー?」
 「もう少し後先考えて物を言いなさい」
 「木村と話してると俺疲れちゃう」
 「ちょっと待ちなさい。何処行くの?」
 「何処ってうちに帰るに決まってんじゃないか」
 「薫の電話番号は要らないの?」
 「あっ、そうだった。教えてくれ」
 「暢気なのねえ。ちょっと話を逸らすともう忘れてんだから」
 「思い出したから教えてくれ」
 「どうせ教えたってうちへ帰る頃には忘れてるよ」
 「だから紙に書いてくれ」
 「紙に書いて渡したってそれを貰ったことを忘れてたら意味無いじゃない。ずっと後になって見つけてこれ何だろうって思いながら捨てるだけだよ」
 「そうそう。そういうことって良くあるんだよな。この前試しにかけてみたら暴力団の事務所で驚いた」
 「暴力団の事務所? 何でそんな番号持ってたの?」
 「大分前に母さんと姉さんに叱られて癪に障って家出しようと思ったことあるんだけど、家出しても何処も行く所無いから暴力団にでも入ってやろうかと思って控えといたんだ。それを忘れてた」


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