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京子
【青春 恋愛小説】

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京子-13

 「ああ、あんなのは作り物だから。寄ってたかって綺麗にするんだから誰でも美人になっちゃう」
 「そんなこと無いですよ。私もモデルになりたいな」
 「木村さんは私よりずっと綺麗だからなれるんじゃないの」
 「本当ですか?」
 「うん。良かったら事務所に紹介しようか」
 「そうですねぇー。まあいろいろ考えて、その時は宜しくお願いします」
 「うん。でもあんなのはいい仕事じゃないよ」
 「そうなんですか?」
 「撮影になるとモデルなんて唯の物扱いだから」
 「はぁー、そういうもんですか」
 「そう。それで儲けるのは事務所だけ。だからみんな裸みたいな格好させられてもテレビに出たがる。テレビなんかちょこちょこっとメイクして短時間で終わっちゃうから数こなせるのよ」
 「そう言えばお姉さんはテレビにはあんまり出ませんね」
 「1度出て懲りた。此処でおっぱいポロッと出して下さい、わざとじゃなくて自然に出たって感じに、なんて言われるんだ。馬鹿言ってんじゃ無いよって言ったら大騒動になって後始末が大変だったって事務所がぼやいていた」
 「そんなことさせられるんですか」
 「そう、モデルもAV女優も皆一緒くたよ」
 「それは厭ですねぇ」
 「そう、だからテレビには出ない。別に金に困ってる訳じゃないし」
 「でももうちょっと頑張れば有名になってスターになれるんじゃないですか」
 「今だって街歩いてるとサインしてくれなんて言われるのに、これ以上有名になりたいなんて思わない」
 「そうですか」
 「あ、誰か来た」
 「ご免下さい。あらっ」
 「待ってたわ」
 「木村さんじゃない」
 「うん。まあ上がって。こちらは陽介君のお姉さん。雑誌で見たことあるでしょう」
 「あ、いつも雑誌で拝見してます」
 「写真とだいぶ違うでしょ」
 「ええ。実物の方がずっとお綺麗」
 「そんなことは無い。まあ上がって」
 「はい」
 「木村さんが来てるとは思わなかった」
 「うん。黙ってたの」
 「やっぱり学校が違うのはハンディが大きいわね」
 「そうよ。私は毎日会ってるんだから」
 「陽介君は?」
 「今自転車の所に行ってるって言うから庭だと思う」
 「陽介っ」
 「あら、加藤君もいる」
 「本当だ。何時の間に」
 「加藤君」
 「ほい。おっ木村か。その後ろにいる可愛い子は誰だ?」
 「私の友達の村井さん」
 「へえー。木村は室井みたいな引き立て役しか友達にしないのかと思ってた」
 「馬鹿言うんじゃ無いの」
 「2人とも全員揃ったから、早く手を洗って上がって来なさい」
 「うん。どう?」
 「何が?」
 「いいだろ?」
 「だから何が?」
 「空気入れだよ。此処に付いてるだろ」
 「ああ。良かったね」
 「何かだるまに目玉を書き入れたみたいに見えるだろう」
 「だるま?」
 「うん」
 「さあー。自転車にしか見えない」
 「当たり前だよ」
 「いいから早く来なさい」
 「うん」


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