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蛍の想ひ人
【女性向け 官能小説】

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「お前、今日はホワイトデーだって言うのになにも用意してないだろ」

俺の胸に顔をうずめて動かない由布子さんに笑いながら

「あ、あぁ」
今日はホワイトデーか。忘れてたな。

「みなとみらいのインターコンチに部屋をとってある」
「あ?あそこは夏に開業だろ?」

それは今年の夏にみなとみらいに華々しく開業するはずのホテルの名前で

「あそこの開発担当のサブは俺」
「だから?」
「今日はホワイトデーにかけて、開業に先駆けての関係業者の内覧宿泊が出来るんだよ」
「へぇ」

「お前に譲ってやる」
「は?洋子ちゃんと行って来いよ」

奥さんと行けばいいだろ。
家族に仕事の成果を見せてあげられるチャンスはそうそうない。

「良いよ。譲ってやるよ。3年前の借りを返すよ」

俺が毎年、由布子さんを誘うために予約していた
クリスマスディナーとホテルを新田に譲ってやったことを言ってる。

「それと・・・明日の金曜日は有給の連絡を入れといてやる」
「はぁ?」
「お前、近頃働き過ぎ」
「・・・・」

「2人でゆっくり話しあえよ」
「分かった」

由布子さんの肩を抱いて店を出ようとしたところで
吉村ちゃんがそっと

「今までありがと」
とウインクした。

新田と吉村ちゃんを睨みつければ
2人は笑いながらさっさと行けと手を振った。



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