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蛍の想ひ人
【女性向け 官能小説】

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残業を早めに切り上げて横浜駅まで飲みに出た。

適当なバーで飲んでいると
「加賀くん」
と会社の吉村ちゃんに声をかけられた。

「あぁ、今日も綺麗だね」

軽いお世辞を言いながら、右手のショットグラスを持ち上げる。
片目をつぶって、バーボンの琥珀色越しに彼女を見れば
いい女に違いない。

「彼女より?」

俺はその言葉に苦笑いして
「なに飲む?奢るよ」
「え・・・じゃぁソルティードッグ」
絶対に由布子さんが頼まないような飲み物を言う彼女は
由布子さんとは正反対の女で。

「待ってて」

カウンターに飲み物を買いに行く俺に
新田がため息をついた。

「加賀くん、彼女と別れそうなんですって?」
木曜日だって言うのに混みあっていたカウンターからソルティードッグを持って戻ると
彼女はそれを受け取って艶やかに笑った。

「どうかな」

そう答える俺に彼女はそっと身を寄せる。

「私を選べばいいのに。私、加賀くんのこと本気よ」

そっと彼女の腰を抱けば
より一層俺に身を寄せて来る。

彼女は美人だ。
気を遣わない会話。
気を遣わない時間。

彼女といると本来の俺自身の時間が過ごせるような気がする。

本気の恋をしようとしたのが間違いなのか。
彼女の腰をさらに引き寄せた。

でも、彼女を抱き寄せても、ドキドキしない。

「俺みたいな男、やめとけよ」
「その女もバカね。加賀くんの魅力が分からないなんて」

吉村ちゃんはヒールで包んだ足で背伸びをして
俺の頬にキスをした。



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