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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-5

 「どうして?」
 「だってお姫様と一緒に歩くんなら武士じゃなくてお小姓なんじゃないの?」
 「オコショー?」
 「そうよ。ほらこれ」
 と言って小姓姿の絵を指した。頭にみすぼらしいちょんまげが突っ立ち、下はまるでブルマみたいな物を穿いている。
 「これぇー?」
 「そうよ。お姫様と一緒ならこれでなきゃ」
 「こんなの厭だよ」
 「厭だって言ったって仕方無いでしょ」
 「仕方無くても厭だ。室野は関係無いんだから口出しすんな」
 「何で? クラスのテーマだもん。別に2人で決める訳じゃ無いんだよ」
 「でも室野は鹿鳴館時代なんだろ?」
 「そうよ。小山君も鹿鳴館時代についてなんか意見があったらどんどん言って頂戴」
 「意見なんか無いよ」
 「それじゃお小姓に決まりね」
 「ちょっと待ってくれよ。『それじゃ』って一体何処と繋がってんだよ」
 「何処とって?」
 「話し合いが煮詰まって意見が大体一致してきた時に『それじゃ』って言うんだろ。全然話もしないでそれじゃって言うのはおかしいよ」
 「小山君日頃に似合わず冴えたこと言うじゃない」
 「何が日頃に似合わずだ。僕はこんなの厭だよ」
 「何で? 服装なんかどうでも大和田さんと一緒ならそれでいいんでしょ?」
 「え? な、何だよそれは」
 「裕子、あんたからこの子説得してみて」
 「おい室野、何言ってんだよ。横から出てきて変なこと言うな、馬鹿。この子って何だ」

 室野芳恵は良介の言うことなど全く無視して大和田裕子に何やら耳打ちして向こうへ行ってしまった。良介は真っ赤な顔をして呆然と芳恵の後ろ姿を見つめていた。

 「ねえ、小山君とにかく座って」
 「あいつなんだって余計な口出ししてくんだろ。僕のこと『この子』だなんて馬鹿にしやがって。だからあいつは嫌いなんだ」
 「まあいいから、ほらちょっと座ってくれなきゃ話も出来ないじゃないの」
 「うん。言っとくけど僕は大和田さんの言いなりにはなんないぞ」
 「そんなこと分かっているわよ。室野さんからかっただけなのよ」
 「全くあいつ・・・」
 「ねえ小山君どんな武士がいいの?」
 「どんなって・・・、宮本武蔵みたいなの」
 「宮本武蔵がお姫様と歩くの?」
 「ん? おかしいかな?」
 「ちょっとどうかな」
 「それじゃ御子神典膳がいい」
 「ミコガミテンゼン? それ何者?」
 「剣の達人」
 「剣の達人がお姫様と歩くの?」
 「おかしいかな?」
 「お姫様のエスコート役はもっとソフィスティケートされてないとおかしいよ」
 「ソフィスティケートって何?」
 「洗練されてて上品になってるってこと」
 「洗練されてて上品な武士なんているかな?」
 「そうねぇー、困ったなぁ。小山君やっぱりお小姓はどうしても厭?」
 「どうしてもっていう訳じゃ無いけど・・・」
 「そうしたら服装の方はなんとか考えるとして基本的にはお小姓で行ってみたらどうかしら?」
 「大和田さんがそう言うならそれでもいいけど」
 「小山君優しいね」
 「別に優しく無い」
 「室野さんの言うこと気にしたら駄目よ。あの人ああいう人なんだから」
 「ああいう人だから気にするんだろ」
 「ああいう性格なのよ。口が悪いだけで根はいい人なの」
 「根なんか悪くても口のいい方が好きだ」
 「小山君素直だからね」
 「別にそうでも無い」
 「小山君何処かで草鞋探して来て貰える?」
 「お姫様って草鞋履くのか?」
 「ううん、小山君が履くの」
 「あ、そうか。探して見る」
 
 家に帰って早速母に聞いてみると草鞋なんて無いと言う。お姉ちゃんに相談しなさいと言うだけで力になってくれないので恵子の部屋に行くと恵子は腕立て伏せをしていた。


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