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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-4

 「何見てるの?」
 「顔を見てる」
 「なんで?」
 「どんな顔かと思って」
 「どんな顔? 良介熱があんの? こっち来てみな、おでこ触ってやるから」
 「厭だよ。真っ黒じゃないか」
 「あ、そうか。で、どんな顔だった?」
 「いつもと変わんない」
 「当たり前だよ。一体どうしたの?」
 「マサルが姉さんのこと美人だって言ってたから」
 「そんなことか。良介は姉さんが美人だって知らなかったの?」
 「誰か他にもそう言った人いる?」
 「美人だって?」
 「うん」
 「みんな言うよ」
 「そうかあ」
 「良介はそう思わないの?」
 「大和田の方が美人に見える」
 「大和田って?」
 「クラスの女の子」
 「可愛い子なんだ」
 「マサルは寝ぼけた顔だって言ってた」
 「寝ぼけた顔?」
 「うん」
 「良介はマザコンなんだよ」
 「どうして?」
 「母さんが寝ぼけた顔だもの」
 「そうかな」

 その時窓から母が顔を出して
 「2人とも手を洗って食事しなさい」
 と言った。

 「ね?」
 「何が?」
 「あの顔」
 「あの顔って?」
 「寝ぼけた顔でしょ?」
 「えーっ? そうかなあ」

 学校では文化祭が近づいていて今週から保護者の承諾書を提出した生徒は7時まで残って文化祭の準備をすることが出来るようになった。マサルと良介のクラスは殆ど全員が承諾書を提出したので放課後の教室は賑やかである。この学校はちょっと変わっていて女子の生徒が男子生徒の2倍以上いる。もともと女子校だったのが近年になって男子生徒を受け入れるようになったからで、女子にとっては学区内で1番難しい1流高だが、男子にとっては志望者が定員に満たない3流高である。
 クラスで服装文化史というテーマを選び、文化祭にはそれぞれの時代の服装を着てクラスの全員が練り歩くことになった。女が多いからどうしても女好みのテーマになってしまうのだ。マサルは毛皮みたいな腰布を付けて原始時代に扮することになっている。目立ちたがり屋の木原涼子が全身タイツの上にマサルとお揃いのビキニみたいな服を着て一緒に歩くことになっていて、涼子と親友の室野芳恵が2人で生地専門店に買いに行っている。良介は武士の服装でお姫様役の大和田裕子と組んで歩く。裕子がお姫様になるというので良介は自分から武士役を志願したのである。マサルが可愛いと言う田宮順子は鹿鳴館スタイルで登場する大勢の中に入っていた。女子生徒が多いから鹿鳴館スタイルの男役の半数以上は女子生徒が扮することになっている。
 良介は武士やお姫様の服装の絵が載っている本を図書館から借りてきて大和田裕子と2人でどれにするか相談していた。しかし話はもっぱらお姫様の衣装のことばかりだし、良介には分からないから裕子が殆ど1人で決めているようなものだ。そして、お姫様の衣装が決まっていよいよ武士の衣装をどうするかという所に来たら、でしゃばりの芳恵が木原涼子と一緒に生地専門店から帰ってきて、武士とお姫様というのは取り合わせがおかしいと口を挟んできた。


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